こういう不調が何か月も続かないという保証はない。今の歌舞伎町はスタッフ不足が深刻化しているが、金の動きが大きくなり、普通の若者にはついていけないという事情も大きい。麻雀の腕に自信がある若者でも、手持ち資金がないため、すぐ店に借りができてしまうケースは多い。裏メンはいつ飛んでもおかしくない人たちだから、店からするとリスク要因だ。プロプーさんのように資金に余裕がある人はそれだけで信用できる。

歌舞伎町戦争の証人として

「宝石店のレートアップは最近3年くらいのこと。3年前に祝儀3枚(三千円)の牌が導入されて騒がれ、2年前にぼくが入ったときはもう祝儀十数枚のアガリが普通に出るようになってました。それが今では100枚超えが出ます(祝儀1枚=千円)。入ったときの3倍くらいにはなっています。どこまでいくんでしょうね? そんな時期に居合わせてるのは面白い体験だと思います」

 宝石店はルールが複雑すぎるしレートも高すぎるから、常連だけの店になっている。その常連の数が多い。

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 多数の常連たちがレートアップについてきている。いや、どちらかといったら、客がレートアップを望むから店は上げていくのだ。店からしたらリスクも上がるのでレートを上げたいわけではない。今の歌舞伎町はレートを上げると客が押し寄せる結果として、宝石店を含む4店舗の狂ったフリー雀荘はレートアップ競争をしている。どこまでいくのか?

 プロプーさんはこんな歌舞伎町戦争の戦場で毎日を送りながらも、麻雀に関して自分はネット麻雀の人だという。心の割合としてはネット麻雀が8割、リアル麻雀が2割だ。今でもネット麻雀の鉄強たちを尊敬しており、あこがれも強い。こんな話を聞くと、今どきのラノベの異世界転生みたいだなと思ってしまう。ネット麻雀からリアル麻雀に異世界転生し、そちらでは無双しているのに、心の8割は元の世界に残っているのだ。無双していると言っても、歌舞伎町もまた彼以上の鉄強がゴロゴロいる世界ではあるのだが。

写真はイメージ ©getty

 プロプーさんは歌舞伎町戦争の証人となる人生を生きている。どうだろう。この人生と有名大学卒から一流企業に入る生き方では、どっちがいいのか。その答え合わせはプロプーさんが中年になったときにすることになるだろう。

 個人的には自営業者になるセンスはあるように思えるので、今度どこかで市場のバグを見つけたときには、自営業の世界に異世界転生するのがいいのではないかと思ってしまう。自己肯定感が低いだけで、じつは前途洋々だ。はたして歌舞伎町を卒業する日は来るのか? それともずっと歌舞伎町で暮らし、たばこのヤニで煮しめたようなオヤジになっていくのだろうか?