昭和59年、父親が息子の空手コーチの頭を銃で撃ち抜いた事件。背景にあるコーチによる性加害、そして射殺に至るまでの父親の葛藤とは……。我が子を無惨に殺された親、学生時代ひどいイジメに遭った者などが仕返しを果たした国内外の事件を取り上げた新刊『世界で起きた戦慄の復讐劇35』(鉄人社)から一部抜粋してお届けする。(全3回の2回目/最初から読む)
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息子の直腸を検査したところ…
3月1日、長いフライトを経てニューオリンズの空港へ。そこには母ジューンと、父ゲイリーも待っていた。久しぶりの父子対面。この感動的な場面をカメラに収めようとテレビクルーも現場を訪れていたが、差し出されたマイクにジョディは「よくわかりません」と答えるだけだった。
帰宅後のジョディは家族や友人たちに温かく迎え入れられた。しかし、ドーセと過ごしていた間に何があったのかは頑なに口を閉ざした。3月9日、直腸検査が行われ、精子の存在が明らかとなる。ドーセのレイプが証明されたのだ。この事実を示され、ジョディはようやく事の真相を語る。ただ、父親だけには本当のことを言わないでほしいと母ジューンに懇願する。
しかし、息子が性被害に遭った事実を実の父親に隠すわけにはいかない。ジューンは電話で必要最小限の事だけをゲイリーに告げる。彼は妻の言葉を黙って聞き、その数日後に家族のもとを訪れ、クローゼットの上に隠していた38口径の銃を持ち去った。言うまでもない。信用させておきながら息子を性の餌食にしたドーセに報復を果たすためだ。
とはいえ、ドーセの身柄は警察にある。自分が殺すことなどできるのだろうか。葛藤とストレスを抱えながら、ゲイリーはある夜、近所のバーを訪れる。と、たまたま顔見知りのABCテレビ系列の記者と隣り合わせた。