――各回の構成で意識された点は?
小池 シリーズを通して、“ルパン一味VS好敵手”という構造をとりました。僕自身、パイカル(『ルパン三世PART1』第2話『魔術師と呼ばれた男』に登場)やプーン(同シリーズ第9話『殺し屋はブルースを歌う』に登場)といった個性的な敵役がルパンと戦う回が好きだったんです。でも、話の全てがルパンVS好敵手だと、どうしてもテーマが“盗み”に寄ってしまう。そこで、次元大介VSヤエル奥崎を皮切りに、石川五ェ門VSホーク、峰不二子VSビンカムと、個々の主要キャラと敵役の戦いを物語の柱に据えました。
――そうした敵役キャラや脚本は、どのように作られていくのでしょうか?
小池 まず、石井克人さん(映画監督。本シリーズのクリエイティブ・アドバイザー)が、「こういう好敵手はどうか?」みたいなアイデアをメモやイラストで出してくださいます。じゃあ、その2人がどう戦えば最も魅力的に見えるかを、高橋悠也さん(脚本)がまとめてくださる。その後、文芸担当の鈴木常泰さんが入って、みんなでディスカッションしながら、ディテールや説得力を詰めていくことでブラッシュアップしていく、といったやり方です。
――制作現場では、ルパン一味VS好敵手ばりのバチバチな火花が飛んだりは?
小池 全くしませんね(笑)。と言うか、いつも石井さんのアイデアがあまりにも魅力的なぐらい奇抜なので、「これをどう映像化すればいいのか?」に、僕の気持ちが持っていかれちゃう(笑)。でも、そのままだとあまりにコア過ぎる作品になってしまうので、そこを高橋さんや文芸の鈴木さんが客観的な指摘も挟みつつ、上手くテコ入れをしてくれる。かなりバランスのいいチームだと思います。
作品内に潜む「名作からのインスピレーション」
――シリーズ中では、実写映画やエンターテイメントからのインスピレーションと思しき演出が散見されるのも楽しいですね。『次元大介の墓標』の基礎はマカロニ・ウェスタン。『血煙の石川五ェ門』は深作欣二監督作『仁義なき戦い』シリーズで、敵役のホークはプロレスラーのスタン・ハンセン。『峰不二子の嘘』のプロットはジョン・カサヴェテス監督作『グロリア』で、敵役のビンカムはブルース・リーやクエンティン・タランティーノ監督作『キル・ビル』を想起させますし。
小池 そこは僕や石井さん、高橋さんそれぞれの持ち寄りですね。例えば『グロリア』は石井さんに教わりましたし。各々年齢も趣味も違うので、「あ、この映画観たことなかった」、「これ、面白いですね」と刺激を与え合っていくうちに、「こういう感じ、いいね」みたいなことを言い合いながら、何となく匂わせるぐらいのさじ加減で取り入れています。