――小池さんは作画も監督も演出も出来るという点で、アニメーターとしてはマルチな部類に入られると思うのですが。

小池 いや、単に欲張りなんですよ(苦笑)。自分の中の様々なフィルターを通したものを作りたいという欲求があるので、全て自分で触りたくなってしまうんじゃないでしょうかね。

――小池ルパンは深い描き込みも魅力の一つですが、ご自身の中で監督仕事と作画仕事の関係性とは?

ADVERTISEMENT

小池 画コンテを描いて、初めて、「このシーンはこうなるんだな」と自分の中で腑に落ちるような感覚はありますね。最初は手探り状態で、そこまでしっかり描き込まず、ラフみたいな状態で一気に最後まで描き上げ、その後、もう一度冒頭に戻ってまとめていきます。時間が掛かるやり方ですが、それを容認してくれた制作側の体制に感謝しかないですね。

3作目の『峰不二子の嘘』で子どもの表現に苦戦した

――演出や脚本の面で難敵となった作品はありますか?

小池 『峰不二子の嘘』でしょうか。不二子とジーンという子どもの逃亡劇なのですが、子どもをどう扱えばいいのか、かなり悩みましたね。単に可愛くしたりいい子にしても魅力的にならなくて。でも、僕自身も子どもの親なのですが、よく考えたら子どもってこっちの言うことを全く聞き入れてくれない(笑)。ですので、結局、劇中でもそういう像に落とし込んだら、何とか上手く表現できました。不二子役の沢城みゆきさんも、やはり自身が母親なので、「こういう言い方、子どもにするかな?」とスタジオで一緒に考えてくださって。スタジオでこんな風に声優の方々から助けられる場面もたくさんありますね。

原作:モンキー・パンチ ©TMS

――SNS上で視聴者からの好評が多い配信新作『銭形と2人のルパン』のクライマックスは、ルパンと銭形警部に加え、謎の存在の“偽ルパン”が絡んでの三つ巴の戦いに。旧ソビエト連邦を想起させる舞台設定といい、『007 ロシアより愛をこめて』を彷彿とさせる列車内でのルパンと銭形の素手ゴロファイトといい、狂気を感じさせる偽ルパンの演出といい、傑作スリラーとしての魅力をも擁する一編ですね。

小池 ありがとうございます。シリーズ化が見えた当初は、不二子編の次はルパン編を作ろうと思っていたので銭形編は予定外だったんです。でも、「せっかくだから全員分作ろう」と機会をいただけて。かなり良い仕上がりになったし、作れてよかったです。

――『LUPIN THE IIIRD』シリーズは劇場用作品『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』で完結を迎えます。

小池 ともかく大変でしたね。制作にはおおよそ3年ほど掛かりまして……。

撮影 橋本篤/文藝春秋

撮影 橋本篤/文藝春秋

次の記事に続く 小池健監督が初めて『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』の台本を読んだとき、脳裏に浮かんだ作品とは?《「なるほど、そうきたか」》

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。