日々の散歩が欠かせないだけに運動量が増えて、健康にもいい影響を与えることになるのではないだろうか。特にリタイア後の高齢者は外出機会が減少しているから、イヌの散歩を通して外出機会が増えれば、心身に好影響を与える効果が大きい。

実際、犬猫の飼育についての研究を行っている麻布大学副学長で獣医学部介在動物学研究室教授の菊水健史氏はこう語っている。

「イヌを飼育している家庭の高齢者の介護費用は、飼っていない家庭に比べると半額になっています。認知症も4割ほど減るという結果です。加齢によって心身が衰えた状態になるフレイルの予防にもつながります。もともとイヌを飼う人は元気で、社交性の高い人が多い傾向にあり、スタート地点が違うという面があるのですが、それにしても海外でも同じような結果が出ていて、シニアがいる世帯にはイヌを飼育する効用が大きいのは間違いありません」

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“イヌ友”によって社交性が高まる効果

ただイヌを飼っているというだけでは、そんなに大きな効果は期待できない。イヌを飼っても散歩などに出なければ運動量は増えないし、効果が少ないのは当然だろう。何より積極的に外に出て行かないと効果は期待しにくいのだ。

散歩すれば、同じようにイヌを散歩させている人に出会う。飼い主同士は面識がなくても、イヌたちは吠え合い、じゃれ合い、あいさつする。それに合わせて飼い主たちも会話するようになる。

最初はぎごちなくても、やがて飼い主たちもあいさつを交わし、コミュニケーションするようになる。それも何頭も集まって一つのコミュニティが出来上がり、“ママ友”ならぬ“イヌ友”ができるようになる。

それによって社交性が高まり、各種の付き合いが増えて元気になる。結果、介護費用を削減でき、認知症のリスクが低下、フレイルの予防につながるわけだ。麻布大学ではそうした調査に力を入れているので、いずれ調査結果のデータからもそうした点が明らかになるはずだ。