〈あらすじ〉
1908年、アン・ジュングン(ヒョンビン)率いる大韓義軍は、咸鏡北道(ハムギョンブクト)シナ山において日本軍に勝利する。しかし、捕虜の解放をめぐってイ・チャンソプ(イ・ドンウク)と決裂。その後、逃した捕虜の情報で日本軍の急襲を受けたアン・ジュングンは部下を失い、1人ロシアの隠れ家にたどり着くが、同志たちの視線は厳しかった。
翌年10月、日本の政治家・伊藤博文(リリー・フランキー)が、大連からハルビンに向かうとの情報が入る。彼の命を奪うことが、亡き仲間を弔う自分の使命だと確信したアン・ジュングンは、同志ウ・ドクスン(パク・ジョンミン)、通訳を務めるキム・サンヒョン(チョ・ウジン)とともに大連行きの列車に乗り込む。
〈見どころ〉
韓国唯一の総合芸術賞である「第61回百想芸術大賞」の映画部門で最優秀作品賞と大賞(ホン・ギョンピョ撮影監督)を受賞した本作。撮影監督による大賞受賞は初という快挙。また第18回アジア・フィルム・アワードでも撮影賞に選ばれている。
韓国では英雄の安重根による暗殺事件。その裏側を壮大なスケールで描く
祖国の独立に命をかける男・安重根(アン・ジュングン)役に、韓国を代表する俳優ヒョンビン。監督は社会や歴史に対する確かな視線にもとづく作劇と魅力的な人物造形で知られるウ・ミンホ。そして『ソウルの春』(23)制作陣がタッグを組んだ、歴史サスペンス。
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芝山幹郎(翻訳家)
★★☆☆☆骨格のしっかりした俳優が多く起用されているのは納得だが、キアロスクーロ(極端な明暗法)を意識したムーディな画調とアクションがマッチしない。台詞のささやき声も逆効果。ため息が混じるので、陰鬱さはさらに増大する。思い入れが激しすぎると、映画の関節は外れやすくなる。
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斎藤綾子(作家)
★★★★★残虐な場面は少ないのに具体的に想像させる演出に怯え、カラーなのに色のない暗く凍てつく光景に身が硬直。疑心暗鬼に囚われる心情を容赦なく抉り出す怖さを、ドラマとして楽しんでいいのか。群衆の中を堂々と歩くことを選んだ伊藤博文が当時の日本の姿なのか。記憶にないと言わせない作品。
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森直人(映画評論家)
★★★☆☆名手ホン・ギョンピョの撮影が際立って秀逸。絵画的な強度と重厚感のある映像美に惚れ惚れするが、作劇はやや平板。力作のわりに歴史劇としては情報の密度が余り高くない部類かと。ノワール的な雰囲気に流れて時折間延びするのを感じた。伊藤博文役のリリー・フランキーは堂々の存在感。
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洞口依子(女優)
★★★☆☆『スノーピアサー』『母なる証明』『バーニング』など自然と被写体を詩的に捉えるホン撮影監督による絵画的美しさの映像が冒頭から牽引。だが、陰鬱でトラウマを抱えたゲリラが複数の被写体になると凡庸に。その後の日韓の歴史を仄めかすラスト然り。日本人役もネイティヴな日本語を話す役者であれば良かったのに。
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今月のゲスト
マライ・メントライン(著述家)★★☆☆☆自らの現代的内省に繋がる葛藤を欠いたシリアス系韓国作品の「対外的」弱さが深く窺える作品。安重根は絶対的偉人! という制約が、本作を韓国国内向けの団結アピール映画にしてしまっている。その結果、大日本帝国の「悪」の質がステレオタイプ的な薄っぺらいものになっており、勿体無い。
Marei Mentlein/1983年、ドイツ生まれ。テレビプロデューサー、コメンテーター。そのほか、自称「職業はドイツ人」として幅広く活動。
- もう最高!ぜひ観て!!★★★★★
- 一食ぬいても、ぜひ!★★★★☆
- 料金の価値は、あり。★★★☆☆
- 暇だったら……。★★☆☆☆
- 損するゾ、きっと。★☆☆☆☆
©2024 CJ ENM Co., Ltd., HIVE MEDIA CORP ALL RIGHTS RESERVED 配給:KADOKAWA、KADOKAWA K プラス
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『ハルビン』
監督:ウ・ミンホ(『KCIA 南山の部長たち』)
2024年/韓国/原題:하얼빈 HARBIN/114分
新宿ピカデリーほか全国公開
https://harbin-movie.jp/index.html




