〈あらすじ〉
物語は〈第3章〉から始まる。ひと気のない山道を赤い車で逃げている1人の女(ウィラ・フィッツジェラルド)がいる。恐怖に顔を歪ませ、怪我を負っている。それを追うのはライフル銃を手にした1人の男(カイル・ガルナー)だ。追撃をかわし森の中へと駆け込んだ女は、そこで老夫婦が暮らす家を発見。必死にドアを叩いて告げる。「助けてください」
時はさかのぼり〈第1章〉。1台の車が夜のモーテルへとやってくる。中では知り合ったばかりの1組の男女が、このあと一夜をともにするかどうかの駆け引き中。女が問う。「あなたは、シリアルキラーなの?」男は「まさか」と答えるが――。
〈見どころ〉
2年間にわたって全米を震えあがらせてきたシリアルキラーによる事件を映画化した、という設定のスリラー・サスペンス。仕掛けに満ちた〈全6章〉で構成されており、鑑賞前のネタバレは厳禁だ。
35ミリフィルム撮影による映像、赤/青の徹底したカラー・コントロール、音楽などにも深い意味とテーマが込められている。
逃げる女、追う男。その結末は──
全6章からなる物語を、あえて“時系列に沿わずに”語ることで観客を魅せていく新感覚チャプター・ツイスト・スリラー。作家のスティーヴン・キングは本作を「巧妙な傑作」と絶賛。監督・脚本を手がけたJ・T・モルナーは、キングの原作による新作映画『The Long Walk(原題)』の脚本に抜擢されている。
配給:KADOKAWA
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芝山幹郎(翻訳家)
★★★★☆ミニマリズムの流儀で撮られた追いつ追われつのスリラーかと思いきや、追うのが誰で、追われるのが誰か、一瞬わからなくさせる。挑発的な変化球だ。時制のシャッフルも、ありがちな技に見えて、ここでは不可欠。球筋を読みたがる観客が陥りそうな推断に、図太いゆさぶりをかけてくる。
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斎藤綾子(作家)
★★★★★車中での薄い青みのある光景をタバコの煙が覆い、それが謎めいて危険な男女の関わりを、美しく柔らかな映像に仕立てている。35mmフィルムの効果か、ラストも儚く綺麗。冒頭に騙され、展開に仰天し、わかった拍子に冷や汗。初見は恐怖に震え、2度見るなら連れと一緒に涼しみ楽しめるはず。
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森直人(映画評論家)
★★★☆☆『悪魔のいけにえ』やタランティーノ等々の延長線に立ち上がったメタジャンル映画。“形式こそ命”の典型で、作劇のギミックそれ自体が推進力となる。ただ話法の実験として称揚するには、組み換え操作の表面的な遊戯性ばかり強くてやや空疎。良くできた玩具のような楽しさはあるかも。
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洞口依子(女優)
★★★★☆魅惑的な主演2人と深赤の視覚を堪能の97分。スリラーに対する期待を一貫して裏切る、撮影、演技のぶつかり合いなど巧妙でユニークな構造……と、中身についてこの様にほんの少しでも触れたらこの映画は予定調和になってしまいそうで多くを語れない。なのに観終わって誰かと語りたくなる。
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今月のゲスト
マライ・メントライン(著述家)★★★★☆おもいっきり『キル・ビル』じみた演出に、幾分かのデヴィッド・リンチ感を乗せて展開するサイコバトルサスペンス。かなり好みは分かれそうだが、最後の最後まで観客の先入観をもてあそぶ徹底感が素晴らしい。通常のサイコ系ツイスト感で満足できなくなった紳士淑女を満足させる「毒」がある!
Marei Mentlein/1983年、ドイツ生まれ。テレビプロデューサー、コメンテーター。そのほか、自称「職業はドイツ人」として幅広く活動。
- もう最高!ぜひ観て!!★★★★★
- 一食ぬいても、ぜひ!★★★★☆
- 料金の価値は、あり。★★★☆☆
- 暇だったら……。★★☆☆☆
- 損するゾ、きっと。★☆☆☆☆
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配給:KADOKAWA
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『ストレンジ・ダーリン』
監督・脚本:J・T・モルナー(『Outlaws and Angels(原題)』)
2023年/アメリカ/原題:STRANGE DARLING/97分
新宿バルト9ほか全国ロードショー
https://movies.kadokawa.co.jp/strangedarling/




