〈あらすじ〉
2016年、アメリカのとある地方都市。全科目で学年トップ、数学でもクイズでも負け知らずの天才少女リン(カリーナ・リャン)は、その優秀さをかわれ、名門高校に特待生として転入することに。そこで女優志望のグレース(テイラー・ヒックソン)と親しくなったリンは、中間試験の最中、ある行動で彼女を落第の危機から救う。すると、それを聞いたグレースの恋人パット(サミュエル・ブラウン)が、自身を含む親が金持ちで成績不良な連中をリンの頭脳で救済する“カンニングビジネス”を提案。それは貧しい父子家庭のリンにとっては魅力的な話で……。
1年後、大学進学のための世界共通試験SATを目前にリンに新たな“オファー”が舞い込む。計画遂行のため、今度はリンと並んで成績優秀な奨学生バンク(ジャバリ・バンクス)も仲間に引き込もうとする。
〈見どころ〉
「高校生版『オーシャンズ11』」とも絶賛された傑作タイ映画を完全リメイク。しかし物語の結末は異なっている。この機に見比べてみるのも一興かも。
前代未聞のカンニング・プロジェクト!
2017年のタイ映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』のハリウッド版。フランス映画『エール!』(14)を『コーダ あいのうた』(21)としてリメイクし第94回アカデミー賞作品賞を受賞した製作陣が手がけた、注目のリメイク作。
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芝山幹郎(翻訳家)
★★★☆☆もともとが知能犯的な発想力とスピード感で勝負する映画だけに、リメイクには不向きだ。初見の観客はそれなりにスリルを覚えるかもしれないが、これはやはり二番煎じ。オリジナルはみずみずしいオレンジを思わせたのに、今回は香りやほろ苦い味の足りないマーマレードになってしまった。
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斎藤綾子(作家)
★★★★☆巨漢の肉体労働者で、娘を溺愛する父の一生懸命さが胸に沁みて温かく笑える。天才少女リンの才能が人助けに始まるのも納得。それがボロ儲けに繋がっても彼女はインスピレーションを現実に生かす面白さに心を置いている。不思議なほどピュアで自分の実力を試す事が目的という明るさが楽しい。
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森直人(映画評論家)
★★★★☆適切な変換を施した良質のリメイク。オリジナルの説話構造の強さを活かしながら、移民女子の階級闘争に仕立て、人種や出自の“壁”の困難に主題の重点を移した。アメリカン・ドリームの裏側を批評的に見つめたものとして、この監督・脚本コンビによる『ルース・エドガー』に連なる佳作。
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洞口依子(女優)
★★★☆☆2017年タイ版はスリリングでワクワクだったのに対して、リメイク版は、アメリカの金持ち特権階級と移民やアジアの子というあまりにもわかりやすいステレオタイプな設定がどうも心地悪い。とはいえ、リンとバンクのアイデンティティを愛らしく映し出す場面(カフェの窓辺の2人)は活きている。
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今月のゲスト
マライ・メントライン(著述家)★★★☆☆原型のタイ映画(ガチ傑作)と異なり、現代アメリカ社会の各種病理、特に移民の葛藤やマネー支配層の洗練された腐敗っぷりを討つ社会派チックな内容になっているのがポイント。主人公に対して最後に放つセリフの解釈によってホラーに転じるギミックが面白い。ただしティーン層向けではある。
Marei Mentlein/1983年、ドイツ生まれ。テレビプロデューサー、コメンテーター。そのほか、自称「職業はドイツ人」として幅広く活動。
- もう最高!ぜひ観て!!★★★★★
- 一食ぬいても、ぜひ!★★★★☆
- 料金の価値は、あり。★★★☆☆
- 暇だったら……。★★☆☆☆
- 損するゾ、きっと。★☆☆☆☆
©Stewart Street LLC 配給:ギャガ
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『BAD GENIUS/バッド・ジーニアス』
監督:J・C・リー
脚本:J・C・リー、ジュリアス・オナー
2024年/アメリカ/原題:Bad Genius/97分
新宿バルト9ほか全国ロードショー
https://gaga.ne.jp/badgenius/




