限られた席を求めて2000人弱が抽選に挑む
テレビ初出演の2019年から、一気に人気タレントへの階段を駆け上ったしおりさんだが、あくまで活動の中心はレストランと塾だと話す。
レストランはランチ営業のみに縮小したが、月に1週だけしおりさんが好きに作った料理を振る舞うときは、抽選になるほどの人気ぶりだ。約1800人もいるLINEグループで募るといい、これだけの人が、カウンター数席の枠を求めて応募してくるため「予約の取れないレストラン」として報じられるようになったわけだ。
塾は現在レストランの2階で営業し、料理の仕事と並行できるように生徒数を10人ほどに絞っている。以前は学年別だった教え方も変化し、ひとりで全学年の子どもたちを一度に見る。しおりさんが子どもたちに夕飯を作って食べさせるスタイルも人気で、空き枠ができるとすぐに埋まってしまうそうだ。
塾の講師を始めて40年が過ぎ、かつての教え子が自分の子どもを塾に入れたいと言ってくるようになったが、時代は変わっても子どもたちは変わらないという。
「親はよかれと思って子どものやることに口を出したり手を出したりするけど、子どもは見てるだけでいいの。伸びたい方向に伸ばしてあげればいいの。例えば数学が嫌いで英語が好きだったら、英語を伸ばす。本人が気持ちよく勉強できることを伸ばせば、他の科目も伸びるから。大事なのは、子どもに教えるんじゃなくて、いいところを育てること」
「死んだら生ごみとして出してほしい」
しおりさんは、今年の8月で75歳。老いや衰えなどいざ知らず、愛車のフェアレディZとホンダ・シティのピンクのオープンカーを乗り回し、休む間もなく働く。その元気と気力の源は「人」だ。
「『一期一会』という言葉が大好きでね。私が会う人には礼を尽くして、目いっぱいのことをしようと思ってるの。そうすることで、レストランもそうだし、塾もそうだけど、たくさんの人が会いに来てくれるでしょう。この仕事がすごく助けになってると思うわ」
これまで、しおりさんはどんな仕事でも「お金の取れるレベルになること」を目指してきた。女装家になってからもその思いは変わらず、番組でも、イベントでも、講演でも、全力で目の前の人たちの期待に応えてきたのだろう。
インタビューの最後に「女装するようになって人生が変わったと思います。女装を始めてよかったですか?」と尋ねたら、しおりさんは迷いなく、ハッキリとこう答えた。
「本当によかったです。こんな楽しい人生が待ってるなんて。私は、死んだらもう生ごみにでも出してっていう人だからね。生きてるうちが花よ。生きてるうちに、ほんとめいっぱい楽しむのよ」
65歳で幕を開けたシンデレラストーリーは、まだまだ続く。
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