出演したトレンディドラマが大ブームに
本格的なブレイクは1988年に訪れた。前出の中森明菜のアルバムがリリースされるのと前後して、フジテレビ系の月曜夜9時台のドラマ『君の瞳をタイホする!』でシングルマザーの刑事を演じ、人気を集める。のちに月9と呼ばれる枠でのトレンディドラマの第1作だ。浅野は当時、インタビューで《最近、ようやく『モデルさんですか? 歌手ですか?』と聞かれなくなったんですよ。やっと女優として認められるようになったみたい》と喜びをにじませた(『週刊朝日』1988年3月11日号)。
さらにこの年の7月、フジ系の木曜夜10時台でスタートした『抱きしめたい!』で浅野温子と幼馴染みの親友役を演じ、W浅野ブームを巻き起こす。放送当時、街にはドラマのなかの彼女を思わせるロングヘアでトラッドスタイルの女性が闊歩するほどであった。
翌1989年には、『抱きしめたい!』と同じ枠で放送された『ハートに火をつけて!』で単独では初めて主演を務める。このときの役どころはテレビ局の下請け制作会社のディレクターで、柳葉敏郎演じる局のプロデューサーと友情を築いてきたのが、だんだん恋に落ちて悩むさまを演じた。これが浅野と同世代の働く女性たちから大きな反響を呼ぶ。
「“行き遅れの三十女”と呼ばれてますが…」
こうした活躍により、日本雑誌協会の日本雑誌記者会・芸能記者クラブが「この1年間でもっとも活躍した芸能人」を選ぶゴールデン・アロー賞の大賞(1989年度)も受賞した。授賞式が行われたとき浅野は30歳になる直前で、《“行き遅れの三十女”と呼ばれてますが、これからも働く女性の代弁者としてがんばっていきたい》と挨拶した(『週刊読売』1990年3月18日号)。

