「日本の食材に感動」「世界に自慢したい」旅を通して気づいた“日本の食文化の素晴らしさ”

――計画的に準備をしてから、日本に戻ってきたのですね。住み慣れたシンガポールと日本を比較して、驚いたことはありますか?

勢太 日本の快適さ、サービスの良さにとても感動しました。日本人であることを誇りに感じましたし、世界に自慢したい気持ちにもなりました。

 でも、料理人として一番感動したのは、やはり食材です。シンガポールでお店をしていたときも、日本の食材を使っていました。でも、空輸だからどんなに早くても2日は経ってしまうんです。

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――それだと、届く頃には鮮度は落ちてしまいますよね。

勢太 それが今は、採れたての食材をその場で調理できている。例えばキノコや山菜を自分で採って食べたり、まだ動いているアカザエビや捕れたての鹿肉をさばいて食材にしたり。レストランにいるときは憧れでしかなかった「究極の鮮度」を毎日体験できているんです。

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――日本各地を回って、特に印象的だった地域はありますか?

勢太 日本各地を旅していてとくに印象に残ったのは、島国ならではの豊かな食文化でした。港町のスーパーに立ち寄れば活きのいい魚たちが並んでいるし、農村では輝く野菜たちが当たり前の様に売られている。

 そんな奇跡のような日本を旅していると、その場で料理したくなる衝動に何度も駆られました。そして、僕らが乗っているキャンピングカーはキッチン付きなので、それができてしまう。

 かおるとはよく、「お客さんがこの場所(キャンピングカー)にいたら、ここが最高のレストランになるよね」って話しているんです。採れたての食材を最高の状態で調理できるって、どんな東京のレストランでもできないこと。ある意味、今が料理人として最も贅沢な体験をしているのかもしれません。

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「人前に出るとか、情報発信するのが一番苦手なことだった」それでもYouTubeを始めた理由

――そんな贅沢な体験を、YouTubeで発信しようと思ったきっかけは?

勢太 日本をめぐる旅を始めてみたら、毎日が感動の連続で。寝る時も起きた時も、全く知らない窓の外の世界が広がっている。この不思議な感覚と感動を、誰かと共有したいと思ったんです。ただ、僕は人前に出るとか、情報発信するのが一番苦手なことだったんですよ。

――意外です。

勢太 料理人って、基本的に厨房にこもっている仕事ですから。お客様の前に出ることもほとんどないし、ましてや動画で発信するなんて考えたこともなかった。でも、だからこそ「あえて挑戦してみたらどうなるんだろう」って思ったんです。

 料理人は厨房の中でしか活躍できないと思い込んでいたけど、もしかしたらレストラン以外のフィールドでも何かできるんじゃないか。

 そして、家族と向き合い、子育てにも全力で取り組む「FULL TIME DADDY」という、これまでの自分が考えていた料理人の常識とは180度違う生き方に挑戦してみたかった、そしてそれを自ら証明してみたかった、という思いもありました。