参院選を前に、石破内閣にはふいに光が訪れたーー。永田町のインサイド情報を、月刊文藝春秋の名物政治コラム「赤坂太郎」から一部を紹介します。
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石破首相に訪れた“天祐”
150日間に及ぶ通常国会が事実上閉幕する6月20日、総理大臣の石破茂はとても上機嫌だった。
「野田(佳彦・立憲民主党代表)さんが立派だということですよ。総理経験者として非常に常識的な判断をしてくれた」
野田が、内閣不信任案の提出を断念したからだ。野党がまとまれば、いつでも可決の可能性があり、国会開会中は常に不安材料だった。また、懸念されていた自民党内の“石破おろし”も起こらず、7月の参議院選挙を乗り越えれば、長期政権が視野に入る。石破は満面の笑みを隠せなかった。
「今年度予算は3月中に成立、内閣提出法案の成立率は98%、不信任案は出ない。少数与党としてこれ以上はない。参院選でも、与党過半数にどれだけ上積みできるかだね」
つい1カ月前までは支持率低迷に苦しみ、周囲に「もうやってらんない」「馬鹿馬鹿しい」などとボヤいていたのが嘘のようだ。反転攻勢に転じたきっかけは、「コメは買ったことがない」という当時の農林水産大臣・江藤拓の呆れた一言だった。
江藤の更迭を余儀なくされ、苦し紛れに決めた小泉進次郎の抜擢によって、政権を取り巻く風景はガラッと変わった。突然の“天祐”に石破は軽口を叩いて小躍りした。
「まさに“ケガの功名”というやつですな。備蓄米ブームとでも言いますかね」
ついこの前まで野党の要求に汲々としていたのに、周囲に意気揚々と農政の未来まで語り出した。
「小泉さんをフォローして農政改革をやり切らなければなりません。大規模化、効率化を進め、コメを増産し、コストも下げて輸出も増やす。これは自給率の向上にもつながるし、食料安全保障にもなる」
支持率は明らかに上昇に転じ始めた。内閣不信任案を出された場合の対応についても、強気に出た。
「不信任案が出れば、すぐに解散しますよ。当然のことです」
※本記事の全文(約5000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2025年8月号に掲載されています(赤坂太郎「W選挙に怯み不信任案を捨てた野田」)。
出典元
【文藝春秋 目次】永久保存版 戦後80周年記念大特集 戦後80年の偉大なる変人才人/総力取材 長嶋茂雄33人の証言 原辰徳、森祇晶、青山祐子ほか
2025年8月号
2025年7月9日 発売
1700円(税込)

