1人は射殺され、残り2人は…

 露木が「こんなところで死んじゃいかんぞ。『1、2の3』と号令かけたら、あいつの銃を取るぞ」と声をかけると、山本は「もう部隊長、あっさり逝きましょうや」と、答えたという。だが、取り囲んだ兵士の一人が銃を突きつけた瞬間、露木はその銃口をつかんで脇の一人を殴りつけ、露木と平田は一瞬の隙を走り抜けて眼前の崖を飛び降りた。

 崖の下は運良く沼地だった。トラックのヘッドライトを照明代わりに銃が乱射されるなか、泥の中に潜んで2人は生き延びた。山本は射殺され、先ほどの穴に埋められたらしい。掃射が終わった後に這い出して一帯を捜したが、山本の死体が埋められたとみられる穴には砂が盛られ、掘り出しようがなかったという。

 夜明けまで、民家の物置に隠れた。翌日、赤い腕章を着けた地元住民とおぼしき2人組の見回りが、物置へやって来た。

次の記事に続く 「女性や子どもの悲鳴が響き、草原は血の海」逃げる民間人を戦車で追いかけ轢き殺し…ソ連軍が1000人超の日本人を虐殺した「葛根廟事件」生存者が目撃した“光景”

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。