「あいつが、ジョディに何をしたのか。父親なら誰でもやるはずだ。俺はそうせずにはいられなかったんだ!」
昭和59年、アメリカで起きた殺人事件。被害者は空手コーチ、加害者は教え子の父親だった。いったい2人の間に何があったのか? 我が子を無惨に殺された親、学生時代ひどいイジメに遭った者などが仕返しを果たした国内外の事件を取り上げた新刊『世界で起きた戦慄の復讐劇35』(鉄人社)のダイジェスト版をお届けする。
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父親が「息子の空手コーチ」を射殺
1984年3月、アメリカの空港で衝撃的な事件が起きた。警察官に手錠をはめられ通路を歩くジェフリー・ドーセ(当時25歳)。彼は前年に11歳の男児ジョディ・プラウシェを誘拐し性的暴行を働いた罪で裁判を受けるため護送されていた。その時、突如として帽子とサングラスの中年男が現れ、ドーセに向けて発砲。銃弾は彼の右側頭部に命中し、ドーセはその場に崩れ落ちた。
発砲したのはジョディの実父ゲイリー・プラウシェ(当時38歳)だった。息子を凌辱した犯人への復讐である。この一瞬の出来事はテレビクルーに撮影され、全米に大きな衝撃を与えた。
ゲイリーの半生は決して褒められたものではなかった。空軍の衛生兵として働き始めた頃からアルコールに溺れ、家庭生活を顧みなくなった。妻ジューンは複数の仕事を掛け持ちして家計を支え、子どもたちを育てた。
1982年、子どもたちは空手教室に通い始め、12月からレッスンを受け持ったのがジェフリー・ドーセだった。彼は母親たちの信頼を得て、レッスン後に子どもたちを送り届けるようになり、生徒たちと打ち解けていった。しかし、この男は恐ろしい過去を持っていた。
ドーセ自身も幼い頃から性的虐待を受けて育ち、17歳の時には児童への性的虐待で逮捕された経歴があったのだ。そんな彼が、お気に入りの生徒だったジョディに牙をむいた。
息子の腸の中には…
1984年3月、カリフォルニアから帰国したジョディは家族と再会するが、ドーセとの間に何があったのかについては頑なに口を閉ざしていた。3月9日、直腸検査が行われ、精子の存在が明らかとなる。ドーセのレイプが証明されたのだ。この事実を示され、ジョディはようやく事の真相を語ったが、父親だけには本当のことを言わないでほしいと母に懇願した。
しかし、母ジューンは電話でゲイリーに息子が性被害に遭った事実を伝えた。数日後、ゲイリーはクローゼットの上に隠していた38口径の銃を持ち去った。偶然、テレビ局の記者からドーセが空港に到着する日時を聞いたゲイリーは、復讐の機会を掴んだ。
