面会でも、話が彼のことに及ぶと目を輝かせ、彼の魅力や楽しかった思い出をとうとうと語るのだ。
捕まった際に所持金が1万円しかなかった渡邊被告を案じて、3万円を差し入れてくれたこと。段ボール3箱にわたる差し入れを送ってくれるも、留置施設に入りきらず、やむなく受取拒否となったこと。そして、留置施設に面会の予約を入れたのに、来なかったこと……などアキラ君のことをうっとりしながら話す。「アキラ君からの手紙が欲しい」と熱っぽく話す場面もあった。
曰く、「アキラくんは、私の初恋でした─―」。
これでは被害者のおぢたちどころか、「捕まるときには一緒」と、ある意味「心中」まで果たした“歩さん”も浮かばれない。と同時に「こんなに思い入れのある人がいたのか……」と感じ、まずは会ってみようと考えた。
「りりちゃんが愛したホスト」が勤務するホストクラブへと向かうと…
彼女の「初恋の人」であり「最後のホスト」であるアキラ君とは、いかなる人物か。そして、彼から見た渡邊被告はどのような女のコだったのだろうか。2回目の接見の翌日である1月5日、彼が勤務するホストクラブへと向かった。
アキラ君が所属するのは、歌舞伎町でも一大勢力を誇る巨大グループの一店舗だ。
そして彼は店でもトップの売り上げを誇り、店だけでなくグループ内でも不動の地位を築いているという。
歌舞伎町のホストクラブの多くは「浄化作戦」が取られていることもあり、「強引な客引きや勧誘をした」として摘発されてしまうことを恐れている。そのためほとんどの店が表向きは「明朗会計」「格安」を謳い、客に自ら足を運んでもらえるよう、1回目の来店である「初回」に力を入れている。多くの店は初回は3000円から5000円が相場であり、中には無料どころか、来店すれば、1000円分のアマゾンギフト券をプレゼントするという店まで現れた。みな、新規顧客の獲得に必死なのだ。
とりあえず、店に電話してアキラ君の出勤を確認して行くと、面倒なことは省きたいため、「初回客」につこうとするほかのホストを断り、「アキラ君」を指名した。
