「店としてはダメ」

 そう言って名刺を出すと、アキラ君はそれまでの柔和な様子から一転し、かなり驚いた表情を浮かべた。そして「りりちゃんのことだったら、話したい。けど、僕の一存では決められない」と言って、私の名刺を持ってキャッシャーへと向かい、上司なのかフロアマネージャーなのか、店のスタッフと話し合いに行く。

 険しい顔で戻ってきた彼はやはり「取材は、店としてはダメです」と言った。

 そして、ある程度「歌舞伎町が今、どう変わってきたか」などの話をすると、「もう、いいですか? 店はあなたのことを記者だともうわかっているから、これ以上いると追い出すことになってしまう」と、美しい顔に穏やかな笑顔を浮かべながらも、きっぱりと5万2500円の会計を促すのだった。

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