犬の糞を顔の前に近付けられ…
じゃんけんで負けた子が、全員分のランドセルを持って帰る罰ゲームもありましたね。やっぱり僕が負けるまでじゃんけんが続く。10人分くらいのランドセルを持ってヨタヨタしていると、いじめっ子が木の枝に犬の糞を付けて僕の顔に近付けてくる。
そこで耐え切れずランドセルを落としちゃうじゃないですか。そうしたら、また学校に戻ってゼロからやり直し。こんなんを毎日やられていたから、当時はとにかく泣いていました。
――いじめられていることは誰かに相談しなかったのですか?
ROLLY 親に心配をかけるから、なかなか言えませんでしたね。それでもある時、耐えかねて打ち明けた。
そうしたら母親に「いじめっ子がいじめればいじめるほど、あなたの心は強くなるはずや」と言われて、そこから心の中で「いじめてくれてありがとう」って唱えるようになりました。これはちょっと異常な話かもしれないけれど、そうでもしないと乗り越えられないくらい、追い込まれていました。
絶望に暮れるROLLYが変わったきっかけ
――いじめが続いて、最終的にはどうやって乗り越えたんですか。
ROLLY 夏休みに、母の故郷に行ったんです。祖父母の家にある縁側に座って、目の前に広がる田んぼを眺めながら「こんな人生が永遠に続くんやろうか。情けない……」と考えていました。そこでふと、木に蝉の抜け殻があるのを見つけましてね。
蝉は、幼虫として長い期間を土の中で過ごします。そしてある日、土の中から這い出して背中に美しい羽が生える。
それを自分の一生に例えてみると、今は母が言っていたような人生の修行をしている瞬間であり、このいじめられた経験が誰かの役に立つ日がくるかもしれない。そして、このいじめられていた寺西一雄も、別の自分になるのじゃないかと急に頭に浮かんだのです。そうしたら、急に気分が晴れてきた。
これは僕だけじゃなくて、誰しも自分の人生においてドラマティックな出来事が起きていて、自叙伝を書けるくらいの物語があるはずなんです。僕の場合は、寺西一雄という人物に生まれ、幼少期から女装に目覚めて親は激怒、姉からもいじめられた。
そうしているうちにロックと出会い、ミュージシャンとしてデビュー。巡り巡って文春に呼ばれ、50年前の話をしている。不思議なもんです。

