ただの丘陵地に過ぎなかった“多摩村”

 ついでに言うと、ゴルフ場ができた頃(つまりニュータウン造成前)は多摩市ではなく多摩町でもなく、多摩村という小さな村だった。

 

 ゴルフ場のひとつがこの地とはやや離れた府中の名を冠しているのは、多摩村などという僻地の名前を取りあげるよりは、競馬場などで知られる府中から頂くほうがいい、という経営判断があったからだとか。

 

 決して悪口を言うつもりはないけれど、それくらいに半世紀ちょっと前の唐木田駅周辺はまったくの僻地、雑木林に覆われた丘陵地に過ぎなかったのである。

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 その頃の多摩村、唐木田は細長い谷あいに20戸ばかりが暮らす集落があり、養蚕や炭焼きなどで細々と生計を立てるような、そういう日本中のどこにでもあるような農村に過ぎなかった。

 いまでは小田急線や京王線を使えば東京都心から1時間足らず。だが当時、そんな便利な鉄道があるはずもなく、農家が点在するだけの不毛の地であった。

 それが一変したのが、多摩ニュータウンだ。