――今は自宅でアクリル画を教え、2017年には第1回目の個展を開くまでに。シンプルにすごいことだと思います。

飯島 去年、2024年には銀座で2回目の個展を開きました。画廊の方も最初は私に対して眉唾だったけど、絵が売れていくのを目の当たりにして、「長年やってるけどこんな人は見たことない」って驚いていたなぁ。

――画廊の方は、飯島さんの以前のキャリアは知っているんですか?

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飯島 知らない、知らない(笑)。

――絵を拝見すると、まったくボディビルとは関係ない。ですが、グラフィックデザイナーであった面影を彷彿とさせる、なんともポップでコラージュ的な絵ですよね。

 
 
飯島さんの油絵作品の数々。デザイナーとしての経験が活きた構図とポップな色使いが魅力的

飯島 やっぱりグラフィックデザイナーだった経験が生きているんでしょうね。幾何学模様は、定規とコンパスを使って描いているんですよ。私は動物が好きだから動物の絵が多い。特に、ニャンコが好きなので、ニャンコの絵ばっか描きたくなっちゃう。一般的な画家の方はこういったポップな絵は描かないので、それが私の強みになっている。現在、教室で絵画を教えていますが、私も楽しいんですよ。人に教えるのが好きなんだろうな。ボディビルのときもそうだったし、今もそうだし。

猫を愛し、猫と暮らす飯島さんの描く「ニャンコ」はリアルな可愛さ

「好きでやっている」という考えを持てるかどうか

――飯島さんは人に何かを教えるとき、どんなことを心がけているのですか?

飯島 感性ってみんな違うじゃないですか。絵であれば、すごく写実的な人もいれば、絵は下手かもしれないけど色使いが良い人もいる。その人が楽しいと思えるところを伸ばしてあげることかな。それから、弱点を克服していく。体を作っていくことに似ているかもしれない。

――人に応じて接し方や教え方を変えると。一方で、飯島さんはボディビルにしても絵画にしても教わる側でもあったと思います。どんな心持ちが必要でしょう?

飯島 何かを続けたいのであれば、「自分が好きでやっている」という考えを持てるかじゃないかな。ボディビルにも絵にも言えることだけど、「自分がここまで頑張っているんだから分かってほしい」って思いがち。だけど、私はそういう気持ちがないんですよね。分かってもらいたいと思ってやってないから。

――なるほど。グラフィックデザイナーからボディビルダー、そして画家。誰もやったことがないキャリアの持ち主です。振り返ったとき、飯島さんはどんな気持ちで歩まれていたのですか?

©山元茂樹/文藝春秋

飯島 自分が好きで今やっている――くらいの気持ち。後世のためにやっているわけじゃないんだから。傍からは綱渡りのように見えたかもしれないけど、私は進むだけだから道幅を考えていなかった。ただ進んだだけ。今は画家として、自分が好きなことをするだけです。でも、もうちょっと生徒さんがいたらいいなとは思います。このインタビューを機に、興味を持ってくれる人が増えたらいいなぁ。私はいつでも生徒募集中でーす(笑)。

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