血痕から犯人の家を探しあてる

 さて、神奈川県警察の警察犬は、行方不明者の捜索のほか事件現場での証拠品捜索や犯人の追跡も行う。ユパ号には、血痕をたどり犯人検挙に繋げた事案もある。

訓練時も現場と変わらず、ブルーの制服を着用

 師走のとある早朝、駅の事務室の窓ガラスが割られる事件が起こった。犯人はケガをしたまま逃走し、捜査員が行方を追っていた。現場には犯人の血痕があり、600メートル先の交差点までポツポツまばらに落ちていたという。しかしそこから先には血痕が見当たらず、足取りがつかめずにいた。

 犯人の追跡のため、瀬谷警察署から警察犬の出動要請が入る。ユパ号と、ラブラドール・レトリバーのゼブラ号が臨場した。

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 午前9時10分に活動を開始。血のにおいを嗅ぎ、血痕が途絶えた交差点を起点に捜索が行われた。ユパ号が先導し、ゼブラ号はユパ号が選ばなかった方向の道を確認しながら後を追う。

「現場には血痕が多量にありましたが、少しずつ減って数十メートルおきに小さな血痕がぽつっと落ちているような状態でした。途中で血痕が見えなくなったときは諦めかけたのですが、ユパとゼブラ号がうまくカバーしあいながら捜索してくれたおかげで、たどることができました」

 時刻は10時10分、執念深い作業によって、ユパ号はとある住宅の前にたどり着いた。玄関先まで血痕が見え、追従した捜査員に連携。防犯カメラ映像の確認も経て、犯人が検挙された。

力強く走るユパ号。得意分野は「隠れている人を捜すこと」

 血痕が途絶えた交差点から住宅までは直線で約1km。途中、曲がったり戻ったりしながら捜索をしたからか、湯山さんは「体感では2~3km歩いていたような気がします」と振り返る。

「家の前まで着いたときは、私も『すごい!』とびっくりしました。本当によく働いてくれたと思います」