ニトリとドンキはなぜ顧客を食い合わないのか?
安田 このように、ニトリは商品づくりに、私たちは店づくりに命を懸ける。やり方は違うけど、その底流にあるのは「お客様のため」という同じ志です。
似鳥 口で言うだけの「お客様のため」ではダメです。うちの会社でも、真剣に「お客様のため」と考えることができる社員は少ない。
いまの若い社員は、既に会社の経営が安定してから入社していますし、恵まれた家庭で育っている。だから、「お客様のため」という感覚がなかなか伝わらない。いつでもお客様の立場に立って、何事も真剣に考えられる人材を、今後も育てていきたいですね。
ところで、志を同じくするニトリとドンキが、同じビルに入っている店舗が、全国で20軒ぐらいありますけど、それでも客の奪い合いにはなっていないね。
安田 「競技種目」がまったく違うからですよ。多種多様な消費者がいて、多種多様な商品がある。これが掛け算で何千、何万通りもあるわけですから、全部のニーズをカバーするなんて、どんな店でもできません。だから、同じビルにニトリとドンキがあるくらいで、ちょうどいい。
似鳥 お互いに得意分野が違うので、真似しようとも思わないしね。
安田 我々がニトリさんの真似をしたって勝てるわけがない。カーテンを年間1000万メートルなんて作れませんよ。もし作ってしまったら、うちの倉庫はカーテンだらけになってしまいます(笑)。
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この続きは、『圧勝の創業経営』(文春新書)に収録されています。
