「驚安の殿堂ドン・キホーテ」の生みの親で、無一文から日本を代表する創業経営者となった安田隆夫氏。現在もグループの会長兼最高顧問として精力的に活動する一方、今月15日には「週刊文春」の取材に対し、末期がんの闘病中であることを告白した。
ここでは、そんな安田氏の新刊『圧勝の創業経営』(文春新書)を一部抜粋して紹介する。
「おそらく私にとって最後の作品になる」と位置づけた同書で、安田氏はかねてより親交のあったニトリホールディングス会長・似鳥昭雄氏と対談を行った。大企業のトップである2人が、口を揃えて「賃金はもっと上げるべき」と語る理由とは?(全4回の4回目/最初から読む)
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とにかく従業員の賃金は上げるべき
似鳥 国も人も、長期的なビジョンを持って、革命を起こすぐらいのことに挑んでほしいですね。ここも逆算計画で考えて、20年先、30年先のGDPはどうしたいのか、労働生産性をいつまでにどう上げたいのか。起業家たちが未来を良くしようと思えるような長期戦略を国に掲げてほしいのに、いまは全くそういうものがないように思います。国の借金はいまやGDPの2倍を超え、先進国のなかでも最も高い水準にあります。
安田 政府には、集団運を醸成するような、明るい希望を持てるビジョンを語ってほしいです。一方で私たち経営者は、未来が明るくなるように、とにかく従業員の賃金を上げたいですね。
似鳥 上げたいです。社内で「上げろ、上げろ」と言っても、なかなか上げないから、この前、具体的な賃金設定を決めたんです。例えば上位20%が、42歳で年収1000万円なら、2年後には40歳で1000万円にする。そのためには年間いくらの利益がないといけないかを逆算して、シミュレーションをさせました。
2024年は総合職社員に対し、6%以上の賃金改定をしました。今後も上げて、社員に還元していきたい。私があまりにも「賃金を上げろ」と言うから、周りから組合の委員長みたいだと言われる(笑)。
安田 普通は逆ですからね。
