「ユニクロと同じか、10円でも高く」
安田 うちの場合は、9万数千人の被雇用者がいて、そのうちの8万人ぐらいが「メイト」さんという時間給労働者です。
似鳥 そんなにいらっしゃるんですか。
安田 商品の種類が膨大ですし、魚をさばいたり、お惣菜を作ったりする従業員も必要ですから。メイトさんたちの時給を100円上げると、だいたい140億円かかります。なので、いきなり100円アップは難しいかもしれないけど、徐々に上げていきたいですね。でも、役員は「最低賃金が上がるので、改定せずに抑えたい」と言うので、「いや、それは逆に先行して上げろ」と。そうしないと良い人材が集まらず、結果的に募集経費が嵩んでしまう。みすみす損をすることになるんです。
似鳥 パートさんの時給を地区ごとに全部調べたら、やっぱりユニクロさんが高いんですよ。だから、ユニクロと同じか、10円でも高くしないと、いい人が抜けていく。
業績が良くなれば賃金を上げますという経営者が多いけれど、私は業績どうこう言う前に、まずは上げるべきだと思いますね。
安田 そうですね。うちはディスカウントショップだから、もともと粗利率が低い。そのうえ販管費率が高いんです。販管費には従業員の給与や賞与、各種従業員手当なども含まれます。他のディスカウントショップが16~18%程度で、うちは23~24%。経営効率としては悪いです。でもそれは、仕入れ価格などを死に物狂いで工夫して抑えて、人への投資は惜しまずにやってきた証でもある。
私は人に対して「ローコストオペレーション」という言葉を使うのが嫌いでしてね。店舗運営の部分ではそうであってほしいけど、これからAI化が進んで経営効率が上がったとしても、人へのコストは惜しみたくないんです。
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この続きは、『圧勝の創業経営』(文春新書)に収録されています。
