「驚安の殿堂ドン・キホーテ」の生みの親で、無一文から日本を代表する創業経営者となった安田隆夫氏。現在もグループの会長兼最高顧問として精力的に活動する一方、今月15日には「週刊文春」の取材に対し、末期がんの闘病中であることを告白した。
ここでは、そんな安田氏の新刊『圧勝の創業経営』(文春新書)を一部抜粋して紹介する。
「おそらく私にとって最後の作品になる」と位置づけた同書で、安田氏はかねてより親交のあったSBIホールディングス会長兼社長・北尾吉孝氏と対談を行った。2人は、現在のフジテレビをどう見ているのか。(全4回の1回目/続きを読む)
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「フジテレビ問題では、ホリエモンに悪いことをした」
北尾 私は1995年に野村證券を辞めた後、まずソフトバンクに役員として入ったんです。孫正義さんが声をかけてくれてね。役員会では私がいちばん孫さんに反対することが多かったけれど、あれこれ言い合いながら、ずいぶん勉強させてもらいました。
安田 ソフトバンクで学んだのは、たとえばどんなことですか?
北尾 まず、インターネットと金融の親和性ですね。私は、ずっと野村證券にいたらパソコンもまともに使えないままだったかもしれない(笑)。ソフトバンクに入ったおかげで、テクノロジーの重要性、新しいものを導入することの重要性を知ることができた。私が金融とITを融合させて成功できたのは、孫さんのおかげです。
安田 なるほど。そういう経緯があったんですね。
北尾 この話に関連するけれど、私はホリエモン(堀江貴文氏)に悪いことをしたなと思っている。20年前、彼がニッポン放送の株を買い占めてフジテレビの経営権を握ろうとしたとき、ウチの会社(ソフトバンク・インベストメント=現SBIホールディングス)がホワイトナイト(敵対的な買収者から企業を守る友好的な買収者)として出ていってね。
安田 フジテレビを助けましたよね。
北尾 そうです。でも、あれは私の間違いだった。それ以来、フジテレビという会社は少しも進歩していない。あのときホリエモンは、ITと金融と、それからメディアのドンになりたいと言っていた。当時の私は、野心ばかりで志のない奴だと思ってしまったけれど、いま思うと彼が正しかった。
それこそイーロン・マスク氏にせよ、あるいはドナルド・トランプ氏にせよ、自分がメディアを持っているわけですよね。私も最近はメディア・IT・金融の融合が新しいビジネス領域になると思うようになって、改めてフジテレビに働きかけていこうとしている。ホリエモンにも力を貸してもらおうかと思っています。
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この続きは、『圧勝の創業経営』(文春新書)に収録されています。

