自分で選んでしたことでそんなふうに思うなら、離婚した時にさっさと戻しておけよ。と、愚かさを笑うのは、一度でも結婚相手の苗字に変えたことがある方だけにしていただきたい。
とにかく、すぐにでも苗字を変えなければ。
そう思い立ち、区役所に電話をかけて手段を聞いたのが、2度目の離婚の翌年である2年前だった。
離婚しても戻さなかった苗字は、原則変更できない
結婚して変えた苗字は、離婚時に旧姓に戻すかそのまま称するかを選ぶ。どちらも離婚届を提出する際に設定できるが、離婚後2ヶ月以降は気が変わっても苗字を変更することが原則できないため家庭裁判所にその旨を申し立て、裁判官による審理を受けなければならない。
申立ての際は必ず理由を明記して、必要なら理由を裏付けるための書類、ないし婚姻前から現在まですべての本籍地から戸籍謄本を取り寄せ、添付する。
これらを家庭裁判所に渡して大体平均2ヶ月の後、許可されればその通知が来る。
苗字を変えよう。戻そう。どこに戻すか? 私が選べるのは、1度目の結婚相手の苗字で実の子供と同じOという姓、あるいは生まれた時から27年連れ添った、難儀なあいつことHである。
私は悩みに悩み、利便と都合を考えてOの姓に戻すこととした。
謎の焦燥感に駆られるまま怒涛の勢いで書類を作成し、東京家裁に送りつけた。そして噂通り数ヶ月待たされた後に審判が下り、そこで更に確定申請を郵送したのち、晴れて氏の変更申立て許可が記された審判確定証明書が送られてきたのだった。
令和5年(家)第68××号
氏の変更許可申立事件について、当裁判所はその申立てを相当と認め、次のとおり審判する。
主文
申立人の氏を「O」と変更することを許可する。
その時の達成感はすごかった。ようやく新しい人生が始まった(というか私のそもそもの人生が戻ってきた)、と思った。
それくらい歓喜したのに、私はこの通知書を2年もの間放置してしまっていた。