デビュー作『ウツ婚!! 死にたい私が生き延びるための婚活』で、高校中退→家出→大学入学→中退→精神科→婚活→結婚までの怒涛の日々と婚活how toを綴った石田月美氏。だが、人生はその後も続く。妻になり、母になっても満たされない、さらなる地獄のはじまりを綴る7月25日発売の『まだ、うまく眠れない』(文藝春秋)から一部抜粋してお届けします。
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モテは初対面がピーク
「モテてきたでしょう?」と聞かれたら、「えぇ。幼い頃からモテ散らかしてきました。人の一生分はモテてきたので、あとは余生だと思って過ごしております」と答えている。
事実、私はよくモテた。小学校の通知表には「いつも男子たちを引き連れ」なんて書かれていたし、中学の頃はまだデートの作法を知らない男子の間で「どうやら映画に行くらしい」というマニュアルが流布(るふ)したせいで私は当時流行(はや)っていた『タイタニック』をすべて違う男の子と7回も見る羽目になり名作の興行収入に貢献した。
しかし人間四十路(よそじ)にもなれば、自分がモテてきたか否かのみならず、そのモテがどういうモテなのかも理解するものだ。私のモテは初対面がピークである。そりゃあもう、めっちゃモテる。周囲を蹴散らし薙(な)ぎ倒すほどにモテる。私は美人でノリが良く華がある。結構イイ奴だとも思う。けれど、しばらく私と時間を過ごせばわかってしまうのだ。まぁ化粧上手いんだなとか、ノリが良いっていうより自意識の洪水でダムが決壊しその中をもがいてるだけじゃんとか、華々しさの作る影の方がデカくて影っていうか闇じゃねーかとか。
それで大体の男性はきびすを返して遠巻きに見るに留める。見守ってくれる人たちこそイイ奴で、ほとんどの男性は闇に捕まる前にダッシュで逃げた。そういえば高校の入学式で五人の男子生徒に告白されたけれど、誰と付き合おうか悩んでいるうちに私の内面がバレ、全員から告白を撤回され、うち二人からは「俺が告白したことを誰にも言わないで欲しい」と懇願されたっけ。
だから私は告白された回数は数知れぬが、お付き合いに至った男性に振られたことこそあれ振ったことはない。大体皆さん、「僕じゃ月美さんを幸せにできない」という「手に余る」の婉曲表現であとずさりしながら去って行った。