なぜ? と問われたら理由はひとつ。めんどくさかったからである。
この許可書を持って区役所に飛び込めば、自動的に全ての私の名義が元の苗字になる――
そうであれば、私は受け取ったその足で役所に駆け込んだだろう。しかし現実はそうではない。
当たり前だが、役所にこの許可書を提出して変更されるのは、戸籍上の苗字のみである。その他の、そう、国民健康保険、年金、運転免許証、パスポート銀行口座クレジットカード各種団体保険自宅の登記……この一つ一つを変更するための行脚が始まるのである。
どうだろうか。なかには戸籍変更したら最後、1ヶ月以内に回らないといけないものも多数出てくるのだ。私はあまりのめんどくささに一旦撃沈してしまった。また今度にしよう。
だって裁判所の審判は下りているのだから。
目を凝らして何度許可書を睨め回してみても、使用期限の類は一切記載されていない。
いつ行っても苗字を変えられる権利を私は得た。いつでも、好きな時に、私は世界を変えられる。そう思って日々の些事にかまけていた。
2年間くらい、「あー苗字変えたい」と思いながら、かまけていたのである。
夫婦別姓、まだなん??
そしてこの度、またしても再再婚の話が浮かび上がった。
結婚はしたいが離婚は懲り懲りである。最悪、離婚は免れないとしても、私はまた苗字問題に振り回されるのだろうか。
ていうか選択的夫婦別姓の話、どうなった??
最初の結婚から十数年経って、私にもいろいろあって、歴史的事件や事故も何個もあり、土の時代から風の時代に、通信は5Gに、iPhoneは16に……
え?
夫婦別姓、まだなん??
まだだったのである。
2025年の今、この現実にしばし呆然とする事となった。
結婚を考えている相手も、私がいまの苗字のことで辟易してるのを嫌というほど見ているので、自分の苗字になって欲しいとは言いにくそうである。
だからと言って私の本名Hは不便すぎるし、実際問題として法律上、更なる手続きをしない限り手の届かないところにある。
変更が(書面上では)許されているOの苗字はそもそも私の1番目の夫の苗字であり、そこに新しい夫となる彼が連なるのは、なんかどう考えても変だ。
選択的夫婦別姓が許されてさえいればなんの問題もないのに。