大手チェーンの乱立と「家系ラーメン戦争」の勃発

 それまでの家系ラーメンは神奈川県を中心に広がっていて、東京都内ではそれほど軒数は多くなく、「家系ラーメン戦争」と呼ぶほどの規模ではなかった。

 しかし、「町田商店」などのギフト系や「魂心家」「壱角家」など、チェーン展開する家系ラーメン店が多数出現し、家系ラーメンの店舗数は一気に増殖していった。これが「家系ラーメン戦争」のきっかけとなった。

 その家系ラーメンの流れを知らない若い世代からすると、資本系のお店で家系ラーメンを知ったというケースも多く、家系ラーメンの定義が揺らぎ始めたのもこの頃だ。資本系が出てきたことで、旧来の「吉村家」からの流れを重んじるファンたちから「これは家系ラーメンではない」と声が上がり始め、家系の定義とは何なのかがまさに論争化したのである。

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 さらに、カップ麺やチルド麺、冷凍麺などでも家系ラーメンが発売されるようになり、いつしか横浜家系ラーメンは“ご当地ラーメン”的な扱いとなっていった。

料亭のような「らーめん飛粋」の衝撃

 資本系の台頭により店舗数が一気に増え、他店との差別化が図りにくくなってきた頃、今までの家系ラーメンとは全く異なる見せ方で大ブレイクしたのが大田区・蒲田に2018年2月にオープンした「らーめん飛粋」である。

 店主の小泉裕太さんは家系ラーメン店出身であるにもかかわらず、料亭のような店構えで「家系ラーメン」と謳うことはなく、店名に「家」の文字も使わなかった。それまでの体育会系なイメージを捨て、高級に見せる工夫が見えた。

らーめん飛粋 ©︎井手隊長

 豪快というよりは繊細な作り方で、親鶏だけで採った黄金の鶏油がかかった一杯は、濃厚でありながら上品で絶品だと多くのラーメンファンを唸らせた。ラーメンの軸の部分は家系ラーメンからは決して外れておらず、独自の進化を遂げたネオ家系ラーメンといえるだろう。

らーめん飛粋の「特製らーめん(もも)」 ©︎井手隊長

 この「飛粋」の大ブレイクが今のネオ家系ラーメンブームの入り口にあると筆者は見ている。