絶対に死なないと思ってます!

國友 『国境デスロード』は、もちろん後で編集が加えられている部分もあるとは思いますが、実際は結構行き当たりばったりで作られていますか?

大前 行き当たりばったりですね。エクアドルで違法鉱山エリアを走るブレーキのついていないトロッコに乗ったんですけど、そこに行くまでトロッコがあるなんて知らなかったんです。本来行く予定だった場所に行けなくなって、「この辺に何かあるらしいよ」という情報を得て急遽向かいました。

國友 僕だったら絶対にトロッコには乗らないです(笑)。映像で観ていると、「こんなものによく乗るな。こいつヤバいな」と思うんですけど、実際にそういう現場にいると、「案外大丈夫かも」という感覚になってくるものですよね。危険なものの周辺には何でもない風景が広がっているから、どんどん奥に進んでいってしまう。そんな感じはありますか?

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大前 あります。絶対に死なないと思ってます!

國友 (笑)。それでも危険を感じたタイミングはありましたか?

大前 映像で残っているものだと、メキシコで経験した「国際移民day」ですね。「この日だけアメリカに合法的に入国できるらしい」という噂を信じた大量の移民と一緒に国境に詰めかけて、催涙ガスを撃たれたり、氷点下の川を泳いだり、取材を強行しようとしてマフィアに目をつけられたり……「お前らは少なくとも1年は戻って来るな」と言われてメキシコを“出禁”になったんです。あの時は、命と取材の両方を取ることはできないのだと身に染みて感じましたね。僕自身は、それでも命の危険は感じていなかったんですけど。

大前プジョルジョ健太さん。

國友 なんで感じないんですか(笑)。では、「ここからは危険すぎるからNG」という線引きは特にないんですね。でも確かに、危険な現場でもライフルを持っているマフィアが鼻をほじっていたりするわけですよね。そういうのを見ると、確かに「大丈夫だろう」と思ってしまうのは分かります。

大前 そうなんです。あと、僕は生粋の“性善説”で生きているのかも。

國友 いろいろ失敗もしているけど、成功体験も重ねているから、「最終的にはどうにかなるだろう」という感覚があるのかもしれません。

「これから拉致るから一緒に行かないか」と誘われて

大前 國友さんが絶対にやらないと決めている「線引き」といえば、この本にも書いてありますが、覚醒剤ですよね。

國友 僕が見てきた限りでは、覚醒剤をやっている人があまりにも悲惨な人生を歩みすぎているんですよね。ただ、好奇心は強いので、正直「やったらどうなるのだろう」とは非常に考えるんですよ。でも、やったらアウトなのは分かっていますので、自制のために「やらない」とあえて公に言っている部分もあります。

國友公司さん、大前プジョルジョ健太さん。

大前 覚醒剤以外で「これはやらない」と決めていることはありますか?

國友 僕の場合、危険地帯からの撤退ラインというよりは、犯罪者を取材する時の踏み込んではいけないラインは決めています。取材はいくらしてもいいと思っているんですよ。でも、そいつと一緒にビジネスを始めたり、誰かを貶めて金を儲けたりは絶対にしないということは守ろうと思っています。

 以前、拉致監禁を生業にしている人を取材している時に、「これから拉致るから一緒に行かないか」と誘われましたが、それは断りました。犯罪をしている人を見たいのであって、自分が犯罪をしたいという気持ちはないんです。現行犯逮捕されたら終わりですから。

大前 どこまで取材者として深く入り込んでいくか、密着していくかは難しいですよね。

大前プジョルジョ健太さん、國友公司さん。

國友 できるところまでは一緒についていきたいですね。大前さんのようにチームでやっているとある程度制御されるのかもしれませんが、僕は基本一人なので、その判断が難しいですが。