理想の最期について聞く「私の『大往生』」。第2回は世界最高齢の現役プロデューサーとして今も活動を続ける石井ふく子。「死が怖いと思ったことはない」と語る彼女が明かす、盟友・橋田壽賀子との「最期の日々」とは。

 『渡る世間は鬼ばかり』『肝っ玉かあさん』など数々のヒットドラマを生んできた石井ふく子(98)。「世界最高齢の現役テレビプロデューサー」としてギネス世界記録に認定され、今なおプロデューサー、演出家としての活動を続ける石井は、100歳を目前に、「自分の最期なんて考えたこともない」と語る。

今年9月で99歳

 歳を重ねて、「死」を意識するようになるという人もいるのでしょうけど、私は違うの。若い人だって亡くなることはあるし、死がいつ訪れるかなんて誰にもわからないじゃないですか。私は、歳は「取る」ものじゃなく、「トル」ものだと思っています。誕生日を迎える度に、歳を取り除いて若返っていくの(笑)。

 年齢なんてただの記号です。いくつになったから何ができないということはないと思って、仕事を続けてきました。

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 今年の春には、久しぶりに山田洋次さんとドラマ『わが家は楽し』でご一緒しました。山田さんは最近ほとんどお書きになってないのですが、私がどうしても「令和の家族の話をやりたい」とお願いしたんです。

 それが好評で、「またなんかやろうか」という気になってきて、6月には向田邦子さん脚本の『花嫁』の舞台版を演出しました。

石井さんがプロデューサー、山田さんが脚本で今年タッグを組んだ 写真は事務所提供

 数年前に転んでしまって、杖をつくようにはなりましたが、ドラマの収録があればスタジオへ、舞台があれば稽古場へと赴きます。

 プロデューサーの私が倒れてしまってはいろんな方に迷惑がかかりますから、健康には気を付けていますね。70歳を過ぎた頃から、月に一度は病院に行って健康状態をチェックしてもらい、何か違和感がある時はすぐにお医者さんに診てもらって。昼から夕方までは秘書が来てくれて、日常生活や仕事のサポートをしてくれています。でも、なるべく自分の力で生活したいので、夕飯だけは作るようにしています。ご飯に焼き魚や卵焼きを添えた昔ながらの食卓です。

 両親を40代で亡くし、配偶者も子どももいない。いわゆる「おひとり様」の私ですが、友達がたくさんいるので、寂しさはありませんね。毎晩電話をくれるのは、大空眞弓さん。私が小食なのを知っているので、「お姉ちゃん、ちゃんとご飯食べた?」と気にかけてくれるんです。上戸彩ちゃんも、「お母ちゃん、元気?」と年中、電話をくれます。“孫”の顔を見せに来てくれることもあって、嬉しいですね。

「後」のことをあまり考えずに今までこられたのは、こうやって家族のように接してくれる、たくさんの人の縁に恵まれたからかもしれません。

 石井が「人の縁」で思い起こすのは、自らの出生にまつわる物語だ。

この続きでは、出生からTBS入社まで、そして橋田壽賀子や京マチ子の最期について、そして自身の理想の最期について詳しく語っている〉

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石井ふく子(98)が語る「理想の最期」|私の「大往生」連続インタビュー②

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