「エジプトに来ると、古代の人々が太陽を神様として信仰したのが、実感として分かりますね。天に太陽があって、乾いた土地に照り付けて、永遠に同じ運動をし続けている。太陽になりたいと願ったクフ王の気持ちが、分かる気がします」
古代エジプトでは、太陽は神と崇められていた。クフ王の大ピラミッドは、太陽信仰と密接に関係しているのだ。堺さんが言うとおり、ピラミッドとセットで太陽を見ると、ふだん日本で見るときとは違う、厳かな気持ちになる。4500年前、人々は天高く登る太陽に近づこうと、ピラミッド建造に挑んだ。そのために巨大な石を運ぶ交通網を築き、建築技術を高度に進化させ、民の力を結集するべく国家制度を整えた。ピラミッドは、文明の発展の原点にあるのだ。
番組は、クフ王と、すぐ隣にほぼ同じ大きさのピラミッドを作った息子のカフラー王に迫る。日本の科学者たちが行っている、ピラミッド内部の隠された空間を探す「ピラミッド透視」の調査結果も、世界に先駆けてお伝えする。
堺さんはミイラにそっと手を合わせると…
翌日から、ツタンカーメンのロケが始まった。エジプト三千年の歴史を辿る今回の番組は、初期のピラミッド、中期のツタンカーメン、そして後期の黒人王・ブラックファラオと、大きく3つのパートで構成される。早朝カイロに戻り、ツタンカーメンパートを担当する青木亮ディレクターの撮影クルーと合流。エジプト考古学博物館で、黄金のマスクをはじめとするツタンカーメンの秘宝の数々を撮影した。そこから空路、「王家の谷」があるエジプト中部のルクソールへ。王家の谷はクフ王の時代からおよそ千年後のファラオたちが、巨大な岩山を天然のピラミッドに見立て、地下を掘って築いた巨大な墓群だ。ツタンカーメン王墓も、その中にある。
今から約100年前、ほぼ未盗掘の状態で発見されたツタンカーメン王墓。そこにあった膨大な数の秘宝は博物館に収蔵されているが、ツタンカーメンのミイラは今も王墓の中に安置され、一般公開されている。堺さんはミイラにそっと手を合わせると、棺があった玄室の探索に向かった。


