「ここは静かな中にも、にぎやかさを感じますね。“生きている”と“死んでいる”が同じくらいに釣り合っている感じがします」

 堺さんがそう感じたのは、ギザのピラミッドとは違い、玄室に鮮やかな壁画があるからだ。三千年前にツタンカーメンを埋葬した人々の様子が実に生き生きと描かれていて、王の復活を願う彼らの声が今にも聞こえてきそうだ。実はいま、若くしてこの世を去ったツタンカーメンと、その家族を巡る「新たな謎」が浮かび上がっていて、エジプト考古学の大きなトピックとなっている。その謎は王墓の壁画と関係があり、いま様々な科学調査が行われている。

玄室の壁画を見る堺さん ©NHK

 朝7時から撮影を始めたが、いつの間にか時間が過ぎ去り、大勢の観光客たちが王墓に入ってきた。何の撮影なの? と声をかけられ、話をしてみると、中国やスペイン、チリなど、実に様々な国から来ているようだ。若い日本人グループの姿もあった。彼らの邪魔にならないよう、そろそろ引き上げねばならない。

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「知れば知るほど、謎めいてくる」

 王墓でのロケのさなか、堺さんがふと、こんな言葉を発した。

「謎がどんどん膨らむ。知れば知るほど、謎めいてくる」

 まさにこれが、世界中の人々が古代エジプトに魅了される最大の理由だろう。次々と新発見があり、謎が解き明かされるのだが、それによってまた新たな謎が生まれ、再び私たちを謎解きへと駆り立てるのだ。いつか、すべての謎が解き明かされる日が来るのだろうか。

次の記事に続く 「スマホの電波が入らず、地図アプリも使えない」堺雅人がヌビア人の末裔のお宅へ→「これはすごい…」古代エジプト文明を巡る“弾丸ロケ”最終日に目撃したもの

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