今も好待遇なのだが……
なぜ、若者はテレビ局を就職先として目指さなくなったのでしょうか。今でもテレビ局の待遇は魅力的です。先述の「日本民間放送年鑑」では、民放連会員社の月例賃金の平均額(所定内賃金+所定外賃金)も掲載しています。2024年版によると、50万3735円(無期雇用/一般従業員/2023年7月現在)となっています。
同じ「一般労働者・所定内給与+所定外給与」の条件で、世間一般の相場を見てみると、35万1567円(事業所規模5人以上)です(「毎月勤労統計調査令和5年7月分結果確報」厚生労働省)。テレビ局はその1.4倍以上ですから、好待遇であることが分かります。
とりわけ、民放キー局は昔から高給で知られています。有価証券報告書には各社の平均年収が記載されていますが、これを元に調べたところ、2023年度の平均年収は1200万円~1600万円超となっています。
ただ、この数字には留意すべき点があります。キー局各社は、持ち株会社が経営を統括する「ホールディングス制」を取っています。この数字は、持ち株会社の平均年収であり、テレビ局本体のものではありません。テレビ局本体の年収を公開しているのはテレビ朝日のみです。では、テレビ朝日の平均年収はどうなっているかというと、有価証券報告書には1400万円と記載されています。やはり、一般的な水準から見ると、羨ましいほどの高給です。
NHKは上場企業ではないので、平均年収の情報は公開されていませんが、私の記憶では、民放キー局ほど高い水準ではありませんでした。とは言え、一般的な水準に比べれば、良い方だったと思います。
こうしてみると、テレビ業界は全体として未だ高水準の待遇を維持しています。それなのに、学生の就職先としての人気は著しく後退している、ということになるのです。

