「ペットボトルを地面に投げたら…」ポルトガル戦のロッカールームで起きた事件
――2010年南アフリカW杯の初戦ブラジル戦は、1-2で善戦しましたが、つづくポルトガル戦は0-7の大敗でした。
鄭大世 あの大敗は、僕のせいです。当時代表で僕があまりに問題ばかり起こすので、予選期間中にキャプテンが、監督に「選手の総意でテセとはやりたくない。自国の選手だけでやらせてくれ」と直談判したそうです。
でも監督は「まだ若いから見守ってやれ」と僕を外さなかった。その時もう25歳とかだったんですけどね。だから、W杯直前でも態度が悪くて問題起こしたりなんかして。そのままW杯本番を迎えたら、ポルトガル戦の時に事件が起きたんです。
――何が起きたのでしょうか。
鄭大世 前半の内容はすごく良かったけど、僕はGKとの1対1を外したりして、なんかイライラしていたんですよ。ハーフタイムにロッカールームに戻り、イラついてテーブルや椅子を小突いたりして。
その流れでペットボトルを地面に投げたら、手が滑って後ろにいたセンターバックの選手に当たってしまって。
その選手が怒って「おい、失点したからって俺らのせいにしてるんじゃねぇよ。点決めてから文句言えよ」と言ったら、鬱憤が溜まっていたほかの選手も加勢してきて、最後にキャプテンからも「お前のために俺らがどれだけ我慢してきたのか知ってんのか!」と怒鳴られてしまって。ロッカールームがやばい雰囲気になったんです。
そこで僕が「わざとじゃないんだ」って謝れば済むことだったんですけど……。
試合後のホテルで「テセ、今日ぐらいは我慢してほしかった」と…
――その時は、謝ることができなかった。
鄭大世 そうですね。そのときは自分の椅子でタオルを頭からかぶって、時間が過ぎるのを待ってました。
そんな状態になっても監督は僕を代えず、チームの空気が悪いまま後半に入り、完全に崩れてしまいました。
試合後、ホテルに帰って食事会場に行く時、エレベーターで安英学(アン・ヨンハ)さんと一緒だったんですけど、ずっと無言でした。
ヨンハさんは常に僕の味方で、愚痴を全部聞いてくれた上で「それでもやるしかない。がんばろうな」って肩を叩いてくれる仙人のような人だったんです。
だから僕は、「ヨンハさんくらいは味方でいてくれてるかな……」と藁をもつかむ思いで「僕のせいですかね」と聞いたら、「テセ、今日ぐらいは我慢してほしかった」と言われて。地獄の底に落ちたような気分でした。
食事会場では怖くて誰の目も見ることができず、味のしない食事をそそくさと済ませ部屋に戻りました。
――結局、誤解は解けたのですか?
鄭大世 食事後、ペットボトルが当たった選手の部屋に謝りにいったら「全然大丈夫。次の試合でがんばろう」と言ってくれて。泣いちゃいました。めっちゃ良いやつですよね。自分が情けなかったです。

