中間選挙を控えたトランプ大統領は、これまでのアメリカ外交の基軸であったリベラル国際秩序を支える様々な制度に挑戦し、同盟国である日本や欧州、カナダに対しても「アメリカ第一主義(America First)」の姿勢を貫いている。しかし、貿易でも安全保障でも、アメリカが最も大きな影響と脅威を受け、対峙しなければならない相手は中国である。
アメリカは中国に対して巨額の貿易赤字を抱え、それに対抗するため「貿易戦争」を仕掛けている。また、南シナ海では「航行の自由作戦」が継続され、安全保障上の緊張も下がってはいない。シンガポールでの米朝首脳会談をめぐって米中は朝鮮半島問題解決のために一時的に協調しているかのように見えたが、それもつかの間のことであった。
「宇宙軍」構想は過去にも言及していたが
そんな中、米中関係にもう一つの波紋を投げかける問題が起きている。それは、トランプ大統領が主張する「宇宙軍(Space Force)」の創設をめぐる議論である。6月18日の「宇宙政策令第3号(SPD-3)」の発表の際に、陸・海・空・海兵隊と沿岸警備隊とは別に「宇宙軍」を創設し、第6の軍種を立ち上げる旨を演説の中で語った。
トランプ大統領は、この「宇宙軍」構想に過去2回ほど言及していたが、いずれも宇宙政策とは関係ない場面(士官学校の式典など)での発言だったため、大きく取り上げられることはなかった。今回は宇宙政策令の発表の場での発言であったため、トランプ大統領の本気度が示されたとみられた。
ところが、この「宇宙軍」は何を行うために、どのような手続きで、どのような規模の軍種になるのか、まったく明らかにされていない。新たな軍種を創設するには議会での立法が不可欠であるが、そのような動きはなく、議会でも下院で「宇宙軍(Space Corps)」の創設を主張する議員が「宇宙軍」設立の法案を通したが、上院では否決されている。
また、宇宙部門は現在、戦略軍(STRATCOM)の一部であり、空軍が所管しているが、この宇宙部門は通信や偵察、GPSなどでの測位といったインフラ機能に特化している。「これらのインフラを開発・維持・整備するために新たな軍種を作る必要はない」、「宇宙部門が独立しても小規模な組織でしかなく、組織管理の複雑化や行政的な重複はムダだ」というのがもっぱらの軍や国防総省の見解である。