“テクノロジーで政治を変える”をスローガンに掲げ、比例代表で初当選を果たした「チームみらい」の党首・安野貴博氏。テクノロジーと民主主義をめぐるその思想とは?
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テクノロジーで政治が変えられる具体的な3つのこと
従来は不可能とされてきた多人数での合意形成も、AI+IT技術によって乗り越えることができます。さらに、テクノロジーの力で「みんなが直接参加できる」「暴力から遠ざかる」「効率的に議論する」の3つが可能になることも、強調したいところです。
デジタル技術の政治利用は、馴染みのうすい高齢者に不親切だという意見もありますが、適切なサポートさえあれば、実はあらゆる世代の政治参加のハードルを下げるツールなのです。わざわざ投票所に出向かなくても、自宅から各イシューに対する意見を手軽に表明することを可能にします。デジタルなプラットフォームなら、AIを使って大量の意見を傾向ごとにまとめて迅速に可視化し、議論を整理することも可能です。
政治の話題においては、しばしば激しい対立や暴力性を誘発することがあります。しかしオンライン上では誹謗中傷や相手に敬意を払えない書き込みは自動的にスクリーニングすることができます。建設的な議論へと誘導し、誰もが安心して自分の意見を伝えられる場として、ガバナンスを効かせることは可能です。社会運動がときにはらみやすい暴力性は、実はネット上のほうが制御しやすく、冷静な議論へと導きやすいのではないかと私は思っています。
また、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールなどで、議論の前提として必要な統計データ・各種調査データをわかりやすくビジュアライズするのもよいでしょう。自動的に整理・要約された意見に専門知を入れて仮説を立て、効率的に課題解決への方向性をさぐることができれば、民主主義そのものの質を高めることにもなります。
テクノロジーは民主主義の新しい形を具現化します。
二大政党制のアメリカ大統領選で感じたこと
2024年、アメリカ大統領選の本選挙を前に、私はデトロイトからシンシナティ、ピッツバーグなどのラストベルト地帯を通って、ニューヨークまで取材旅行に行ってきました。アメリカはさまざまな政治的イシューをめぐって多元的な考えが溢れかえっています。
にもかかわらず、選挙においては二大政党制によるシンプルな二択を採用しています。旅を通してたどり着いた一つの仮説は、「情報の処理」が民主主義の一つのボトルネックになっているのではないか、ということです。

