「デジタル民主主義2030」プロジェクトや著書『1%の革命』が話題のAIエンジニア・安野貴博氏が、夏の参院選に出馬表明した。5月8日の記者会見では、「テクノロジーで誰も取り残さない日本」を掲げ、新党「チームみらい」でエンジニアをはじめ技術に明るい約10名の候補者を擁立することを発表。昨年の都知事選で民主主義を抜本的にアップデートするマニフェストが大注目され、15万票を集めた気鋭のエンジニアは国政でなにを仕掛けようというのか?
“スタートアップ政党”だからできること
安野氏は自ら政党を立ち上げた背景として、政治や行政の場における「デジタルリテラシーの欠如」、個々の熱意はあるものの「停滞が起きている構造的な問題」や「永田町を外から変えることの困難さ」があり、既存政党の利害関係に縛られない“最短経路”を選んだという。
「大企業政党に対して、全くしがらみのないスタートアップ政党はいろんな物事を開示して、全体の空気を変えていける」という確信は、この20年ソフトウェア業界で、情報がクローズドな大企業に対してオープン戦略のスタートアップ企業が挑み、業界地図を塗り替えてきたことから来る。自身でも2社の起業を成功させてきた鬼才エンジニアのビジョンは、異例尽くめだ。
「チームみらいが国政政党として要件を満たした後、まず最初に取り組みたいのは、年1億円以上ある政党交付金を用いて“永田町エンジニアチーム”を立ち上げることです。従来の国政政党では、党によっては政党交付金の多くが選挙に使われていますが、私たちは自らの選挙のためではなく、政治のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるための活動に使います。このチームは約10名の優秀なエンジニア/リサーチャーで構成するものとし、アウトプットはすべてオープンソース化してどなたでも参加、貢献できるようにします」
永田町にエンジニアチームを送り込み、政党の垣根を越えて、政治のDX化を促進。そして民意を政策に反映させる仕組みとして、オンライン上で大規模な熟議を行えるシステムを実装するというのだ。
それが単なる絵空事でないことは、都知事選で民意を吸い上げて政策をアップデートする「ブロードリスニング」の仕組みを立ち上げ、「デジタル民主主義2030」プロジェクトで熟議ツール「いどばたシステム」を開発済みなことからも本気度がうかがえる。AIを活用することで1億2000万人が熟議できるダイナミック・ブロードリスニングを実現しようという気宇壮大なビジョンを掲げる。
今後の展開としては、「チームみらい」としての理念を込めたマニフェストver.1.0を発表し、選挙期間中に建設的なフィードバックを反映し、大規模なスケールでもデジタル民主主義が機能することを実証していく計画だ。