とにかくデカすぎる絨毯が、ここにはある
60畳(約100平米)くらいあるのかしら? と思っていたら、想像をはるかに超え途方もなくでかい。マンションの4、5階の高さに相当する縦14m、横21.5m(約300平米)の大きさで、重さはなんと1200kgもあるという。アシカバッドの伝統的な「アハル」という紋章がデザインされており、春夏秋冬や鳥を表している。
2001年に40人の女性の手によって8か月かけて織られ、2003年にギネス登録されたらしい。その向かい側には、やや小ぶりな「トルクメンの心」と名付けられた絨毯が架かっていた。
こちらは昔、ソ連の劇場から注文を受けて作ったけれど重すぎてかけられず返品されたそう。織子さんたちはがっかりしたに違いないけれど、結果として祖国に残され公開されたので良かったのかもしれない。
その時、ウイーンという機械音とともに「黄金時代」が下がってきた。半年に一度の大掃除らしく床に下ろすのだという。
「トルクメニスタン人にとって絨毯は単なる産業ではありません。儀式やおもてなしの心、家族や祈り、伝統や価値観が詰まっています。この博物館は伝統の復興を担っているんですよ」と、お姉さんは目を細めて我が子のように絨毯を見つめた。
絨毯博物館を一周すると、入り口で待っていたSさんが、「あの『黄金時代』はどうでしたか? 今度は『黄金の馬』をお見せします。こちらも絨毯同様、国章にも登場しますが、世界で一番、美しい馬です」とニマッと笑った。男性にとっては絨毯より馬のほうが魅力的なのだろう。
しかし、黄金とはおおげさだ。どうせベージュかブラウンくらいだろうとタカをくくっていたのだが……。
