「看護師なんてありえない」「こんな調子だと、お父さんみたいに名前を書けば入学できるような大学にしか行けないわよ」と言われたことも……。学歴コンプレックスを抱えた母親による、壮絶な教育虐待の末に彼女を殺害した当時31歳の女性。いったい彼女は母親とどんな暮らしをしてきたのか? 我が子を無惨に殺された親、学生時代ひどいイジメに遭った者などが仕返しを果たした国内外の事件を取り上げた新刊『世界で起きた戦慄の復讐劇35』(鉄人社)から一部抜粋してお届けする。(全4回の2回目/続きを読む)
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なぜ母親をバラバラに?
2018年5月17日、DNA鑑定により遺体の身元は桐生しのぶさんであると特定された。ではなぜ、のぞみは、母は別の場所にいると言ったのか。行方がわからないならなぜ届を出さないのか。のぞみが事情を知っている可能性が高いとみて、警察は彼女を任意で事情聴取する。
のぞみは事件への関与を一切否定した。が、6月5日、滋賀県警は彼女を死体遺棄容疑及び死体損壊容疑で逮捕。
彼女が自供を始めたのは翌6日からだ。
「母の体をバラバラにして、河川敷に捨てたことは間違いありません。でも、私は母の命を奪っていません。母は1月20日の未明に自ら命を絶ちました」
つまり殺人ではなく自殺だと主張するのぞみ容疑者。現場検証の時点で自殺の痕跡がなかったことがわかっている警察はこの供述を怪しんだ。その後、同容疑者の家の浴室に繋がる汚水桝からしのぶさんの骨片が発見されたこともあり、逮捕から半月後の6月21日、のぞみ容疑者を死体損壊容疑で追送検。彼女から詳しく経緯を聞き出す。
のぞみ容疑者の供述は次のとおりだ。1月20日夜、母は自分を厳しく叱責した。理由は母に約束していた助産師学校の入試で不合格となったため。9年間浪人したこともあり、そのうち「もう何もかも嫌になった」と言い台所から持ってきた包丁を自分の首に当てた。まさかと思い目を逸らしたところ「痛い」という声が聞こえ、母がリビングに敷いた布団の上で仰向けで倒れていた。祖母や親類に母が命を絶ったのが自分のせいだと責められるのが嫌で、死体を河川敷に捨て、隠した──。
