「モンスターを倒した。これで一安心だ」――2018年1月20日、滋賀県に住む看護学生が母親を殺害し、遺体を解体の末に遺棄した事件。なぜ当時31歳の女性は、一緒に暮らしていた母親を殺害したのか? その背景にある“壮絶な教育虐待”の実態とは? 我が子を無惨に殺された親、学生時代ひどいイジメに遭った者などが仕返しを果たした国内外の事件を取り上げた新刊『世界で起きた戦慄の復讐劇35』(鉄人社)から一部抜粋してお届けする。(全4回の1回目/続きを読む)

写真はイメージ ©getty

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女子大生が母親をバラバラに

 2018年、滋賀県で女子大生が母親を殺害、遺体をバラバラにして遺棄するという事件が発生した。女性は母親から国立大学の医学部に入学し医者になるよう強要され9年間の浪人生活を体験。その間、苛烈な教育虐待を受け続け、最終的に滋賀医科大学医学部看護学科へ入学するも、母親は娘が看護師になることを許さず助産師の職に就くよう命令する。精神的に疲弊しきった彼女は覚悟の末に母親を刺殺。犯行後、ツイッターに「モンスターを倒した。これで一安心だ」と投稿した。

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 2018年3月10日13時40分ごろ、滋賀県守山市野洲川沿いの道路を歩いていた女性が、河川敷に大量のトンビが群がっているのを目撃した。言いしれぬ不安を覚えた彼女は警察に連絡。ほどなく守山署の警官が到着し、強烈な腐敗臭に顔を歪めながら現場を確認すると動物の死骸らしきものが目に入った。警官はひとまず、その物体にポリ袋をかぶせ市役所に回収を依頼、現場を後にする。

 3日後の同月13日、市役所の担当者が警察立ち会いのもと回収に取りかかかろうして驚愕する。それは明らかに人間の切断された胴体だった。滋賀県警は死体遺棄事件として遺体を監察医に回すとともに、周辺の聞き込み捜査を開始。現場は県営の公園内にあり、子供の遊び場や年寄の散歩コースに使われる場所。人目は少なくなく、目撃情報が得られるはずと睨んだ。

 翌日、司法解剖の結果が出て、性別は女性、年齢は30歳~50歳、死後1、2週間が経過しており、自ら命を絶った形跡はないことが判明する。が、身元の特定に繋がるような所持品などは皆無。やはり聞き込み調査に頼るべきと警察は30人体制で近隣住民を訪ね回る。

 3月15日、しらみつぶしに近隣を当たっていた警察が現場から徒歩数分、「桐生」の表札がかかった住宅のインターホンを押す。玄関先に出てきたのは、30歳前後の女性。最近、この辺りで行方不明になった人物に心当たりはないかと尋ねたところ、彼女は「何も知らない」と言う。続けて、この一軒家には1人で住んでいるのかと聞くと、母親と2人暮らしだが、いま母は外出中とのことだ。お母さんにも話を聞きたいので帰宅時間を教えてほしいとの問いには、聞いてないのでわからないとの返答。警察は再訪することを告げ、最後に女性の名前を聞いた。桐生のぞみ(当時31歳)。警察は手帳に書き記し家を後にした。

 警察は翌16日も桐生宅に足を運び、お母さんは在宅かと尋ねた。と、のぞみは言う。