広島の高校生が受け継ぐ原爆の記憶

 体験談の詳細な聴き取りをもとに生み出される絵画は、凄まじい。大やけどを負った母親の背中にわいたウジ虫を箸で取り去ろうとする様子や、死んだ我が子を背負い茫然と立ち尽くす若い母親の姿……。一枚ずつが迫真的で生々しく、観る側の胸を激しく衝いてくる。

「原爆の絵」の制作過程は、高校生と証言者の深い交流を促すという。時間をかけて聴き取りをしたあと、高校生は証言者によるイメージ図やわずかな写真資料をたよりに構図を考え、光景の忠実な再現を目指す。約1年の制作期間中は、証言者に何度も絵を確認してもらい、直しを入れながら完成へとつなげていくのだ。

「戦後80年 《明日の神話》 次世代につなぐ 原爆×芸術」展示風景、「次世代と描く原爆の絵」を集めた展示室

 このプロセスを通して高校生たちは、被爆体験を自分のなかに取り込み、深く理解することとなる。若い世代への被爆体験継承の方法として、きわめて有効だと感じられる。

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 岡本太郎の、また現代アーティストたちの、そして高校生たちの作品を観ながら、過去の出来事と記憶をいかに次代へつなげていくことができるか、いま一度じっくりと考えてみたい。

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「戦後80年 《明日の神話》 次世代につなぐ 原爆×芸術」展
7月19日~10月19日
川崎市岡本太郎美術館
https://www.taromuseum.jp/

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