戦後80年の節目に、アートは戦争や被爆の記憶継承にどう関われるか。真摯に問う展覧会が開催中だ。川崎市岡本太郎美術館での「戦後80年 《明日の神話》 次世代につなぐ 原爆×芸術」。

川崎市岡本太郎美術館

「いま観るべき」岡本太郎の巨大作品

「芸術は爆発だ!」のセリフで知られる岡本太郎は、第二次世界大戦を経験した世代にあたる。30歳のときに中国戦線へ送られ、戦地で過酷な日々も過ごした。復員後に猛然と創作活動を開始し、強烈な色彩と形態を持つ作品を続々と発表していくこととなる。

 そのうちのひとつが《明日の神話》。広島と長崎に投下された原爆、またビキニ環礁での水爆実験も含めた「核の惨禍」を題材にしたものだ。もともと壁画として構想され、現在は渋谷駅の連絡通路に長さ30m高さ5.5mという大迫力のサイズで掲げられているので、目にしたことのある向きも多いだろう。壁画のもととなった油彩画を川崎市岡本太郎美術館が所蔵しており、これが今展に出品されている。

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岡本太郎《明日の神話》 1968年 川崎市岡本太郎美術館蔵

 壁一面を覆い尽くす大画面は少々抽象的・象徴的な表現がなされているが、核の壮絶な威力、使用がもたらす悲惨さ、それでもなお明日に向け生きようとする人類の営為を、はっきり読み取ることはできる。一見したときのインパクトもさることながら、現代を生きる私たちへの問いかけを含む本作は、戦後・被爆80年というタイミングに改めて対峙する意味が大いにある。

岡本太郎《明日の神話》(部分) 1968年 川崎市岡本太郎美術館蔵

 同館は多くの岡本太郎作品を所蔵するので、ほかの代表作も併せて観られるが、今展はそれだけに留まらない。戦争の記憶を起点として、現代の問題を独自の視点で表現する、以下9組の現代アーティストが出品しているのだ。