現代アーティストたちが出品した“原爆のアート”
木を用いて情念の籠もった彫刻をつくり上げる安藤榮作。映像プロジェクト「現代物理への旅」シリーズをつくり続けている笠木絵津子。自身が強く惹かれるという青色の顔料で、一対の大きな絵を描いた後藤靖香。絵画や映像、文筆、マンガ、さらには空間全体を作品化するインスタレーションなど多様な手段を用いて「核」という存在に迫る小林エリカ。また蔦谷楽は、歴史上に存在する物語を再解釈し現代視点で更新する作品を制作、今展ではインコをモチーフとしたインスタレーションを出品している。
さらには、不可視なものや深層心理を覗き込むような感触を絵画やインスタレーションに仕立てる冨安由真。世界のさまざまな場所で、地面の凹凸を擦り取るフロッタージュやスケッチをして素材を集め、場の表情を描こうとしてきた安喜万佐子。シリアスな環境・社会問題を扱いながら、ユーモアを交えた美しい作品を生み出し続けている米谷健+ジュリア。李晶玉は、コラージュなどの手法を用いながら平面作品をつくり、国家や民族といった大きな問題に果敢に切り込んでいる。
これら現代アーティストの作品群が、館内のそこかしこに並んでいる。いずれも長い期間にわたり深く考え抜かれ、また手を動かし続けて成された作品ばかりゆえ、見応えはじゅうぶん。観て回るのにそれなりの時間が必要となるので、注意が必要だ。
展示はまだ続く。広島市立基町高等学校の生徒たちが描いた、原爆にまつわる絵を集めた一室が強い印象を残すのだ。
同校では創造表現コースの生徒たちが、半年以上の時間をかけて被爆者から話を聴き取り、その記憶や思いをもとに絵を制作する「次世代と描く原爆の絵」という活動が、2007年から続けられてきた。この取り組みから生まれた原爆の絵の原画42点が、ずらりと並んでいる。





