「被告人は私の心を二度、三度と殺しました」

 裁判において、弁護人が被告人を叱責することは珍しいことではないが、それでも今回の裁判の一幕は圧倒されるほどのものであった。背景には、Bの被害感情が非常に大きいこともあるかと思われる。

被害者は歯科医師の父に憧れ、歯科助手の仕事に就いていた ©Faustostock/イメージマート

 AはBに対して謝罪の場と慰謝料の提案をしているが、拒絶されている。その思いが意見陳述(代読)という形で裁判中に読み上げられた。以下、要旨を抜粋して紹介する。

 私は、歯科医師である父の背中を見て育ちました。患者さんを思いながら仕事する父のようになりたいと思い、歯学部に在籍しながら、歯科助手として頑張ってきました。

 今回の事件は国家試験の浪人中に、指導医の資格を持つ被告人からわいせつ被害を受けました。さらに、被害の後に「この、下僕!」、「私立のくせに」と言われたことはさらに辛い出来事でした。それにより私は将来の夢を汚されました。

 精神的ダメージは私が思った以上に重く、事件から1年以上経過していますが、今でも2週に一度精神科を受診して、薬も処方されています。体重も事件当時に比べて、23キロも痩せてしまい、あと1.9キロ減ったら命の危険があるとも言われたほどでした。

 さらに私を追い詰めているのは、被告人の事件後の対応です。反省していると言いながら、酒のせいにしていると聞いています。また、他に女性トラブルはないと言いますが、私が示談を断っているのは、他にも複数の被害を受けたという女性を知っており、私が金銭を受け取ることで放免とすることは、社会悪だと信じているからです。

 裁判の中で「次は免許剥奪」という言葉があったと聞きます。当初より、被害者の私を飛び越えて、不起訴だ、歯科医師の行政処分だなどの発言が繰り返されていることについても、私としては深く傷ついています。

 性犯罪は心の殺人と言われています。被告人は私の心を二度、三度と殺しました。被告人には自分がしたことがどういうことか自覚させるために、実刑にして、一定期間社会から隔離して反省を促すしかありません。このような発言をして、逆恨みをされるかもしれません。それでも罰として刑務所に入るべきです。被告人は社会をなめていると思います。

 最後に、娘を持たない被告人夫婦には私の両親が受けた苦痛は一生わかることはないと思います。被告人からの報復防止の観点からも、私や家族へ今後一切関わらないお約束をしていただきたく思います。


 後編では、情状証人として出廷したAの妻が涙ながらに訴えた内容や、A本人による証言、最終的な判決についてお伝えする。

次の記事に続く 「この、下僕!」20代女性にまたがり陰部を擦り付け、「私立のくせに」と学歴マウントも…性犯罪を犯した“30代・子持ち歯科医師”が受けた「報い」

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