カラオケという密室で、部下にキスをして胸を揉み、さらには跨って股間を擦り付ける——2024年2月に大学院へ通う30代の歯科医師Aが、酒の席で歯科助手の20代女性部下Bにわいせつ行為をしたとして、不同意わいせつ罪に問われている裁判が7月まで東京地裁であった。

 Bは今回の事件について「私の心を二度、三度と殺しました」と明かし、ショックで20キロ超も体重が減ってしまったという。

 Aは被害者に対して謝罪の意思を見せているものの、通学する大学院での事情聴取に際して「不起訴処分になれば相手に損害賠償請求を行う」などと答えていたことが判明。裁判では、自らの弁護人から傲慢な考え方を叱責される場面もあった。小さな子ども2人の親でもある、Aに言い渡された判決とは。(全2回の2回目/最初から読む)

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小さな2人の子どもを持つ歯科医師が、部下の20代助手に対して起こした事件 ©Faustostock/イメージマート

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「土下座して謝罪したい」妻は離婚も考えたが、できなかった

 弁護人は、Aが事件後に行った各種行動を反省の証拠として提出した。謝罪文の他、Bに拒絶されている慰謝料を供託しその返還権を放棄している点、その他にも能登半島の被災地、人権侵害被害者の救済団体などにも寄付をし、贖罪活動として介護や健診などのボランティアを行っていることを明らかにしている。

 情状証人として、Aの妻も出廷した。証人として嘘をつかない宣誓文を読みながら涙を流していた。事件については、事件の数日後に本人から直接聞いたと振り返る。

 仮に自分が同じ被害にあったら「恐怖」「相手に強い怒りを抱く」と語り、離婚も考えたというが、10歳に満たない子を2人持つ親として、躊躇う気持ちの方が強かったと話した。

 Aは事件当日、過度な飲酒によって自身の傲慢な性格が出たと反省しており、妻も酒癖の悪さなどをこの場で明かしている。性格の問題点を夫婦で話し合い、刑と被害者に真摯に向き合っていくと誓約した。

 涙で時折、言葉に詰まる妻の証言の様子をAはどのように聞いていたのだろうか。傍聴席からは、Aの感情のゆらぎは見えず、淡々と聞いているように感じられた。