老人ホーム選びについてお子さん世代から受ける相談で多いのは、「親に早めの備えをしようと訴えても取り合ってもらえない」というお悩みです。「自分が認知症になったらいいも悪いもわからないんだから、どんな施設でもいい」「自分はまだ元気だから、倒れたときのことなんて考えたくない。成り行き任せでいい」などと言われてしまうと、返す言葉もありません。
親御さんの気持ちもわからなくはないのですが、「もしも自分が入るなら、こんな老人ホーム」と希望を周囲に伝えておかなかったために、本意ではない施設に入らざるを得なくなり、後悔したり、揉めたりするケースが実に多いのです。本人も家族も納得できるように、老人ホームに求める条件の優先順位を決めておき、親子で共有しておきましょう。優先順位を決めておけば、老人ホームを下調べする際に確認すべき内容も明確になります。
気になる老人ホームを見学しておこう
将来入るかもしれない老人ホームに目星をつける際は、パンフレットを読むだけでなく、実際に施設を見学すること、可能なら複数の施設を訪ねて比較することをお勧めします。見学の際は、いくつかのポイントがあります。
まず、来訪者に対して職員が笑顔できちんと挨拶してくれるかどうか。それだけで研修が行き届いているかがわかります。次に、入居者や職員の表情がいきいきしているかどうか。楽しく語らう様子などからホームの雰囲気をうかがい知ることができます。
もちろん、「元気で明るい雰囲気だとかえって居心地が悪い」「部屋で静かに過ごしたいので、室内空間の充実が最優先」という方もいるでしょう。「自分に合っている、合っていない」の基準で判断するといいと思います。
見学で必ずしたい質問項目
さらに、案内してくれる職員に「このホームはいつまでいられますか?」と質問してみましょう。「いつまでもいられますよ」と漠然とした答えが返ってきた場合、選択肢から外したほうが無難です。看取りまでケアする体制のあるホームであれば、「昨年は10人の方が亡くなり、そのうち7人がこのホームで、3人が病院で亡くなりました」などと具体的な情報を伝えてくれるはずです。