現在の少年院に収容されているのはどんな少年たちなのか
これまで私は20カ所近くの少年院・少年刑務所を訪れ、そこに収容されている多数の少年少女にインタビューをしてきた。ここでも彼らの言語力の乏しさは明白だった。
かつての不良少年は、虐待、差別、貧困といったことで家庭や学校に居場所を見つけられなくなった者たちだった。彼らは、暴走族のような不良グループに属すことによって代わりの居場所を手に入れた。そこで現実逃避のためにシンナーを吸ったり、自分の存在証明のために暴力を振るったりすることで、少年院へ送致されたのだ。
だが、現在の少年院に収容されているのは、そうした一時代前の不良とは異なる。様々な要因によって居場所を失うところまでは同じだが、今の子供たちは、不良グループではなく、ネットやアニメなどの二次元の世界に居場所を見出す。すでに見てきたように、その負の側面がひきこもり、ゲーム依存、心身の疾患などだ。
これらは犯罪には当たらないため、保護された後、彼らは少年院ではなく、回復施設へ送られる。現在、全国的に少年院へ送致される子供が激減する一方で、ひきこもりやネット依存からの回復施設の数が急増しているのはその表れといえる。
「少年たちが言葉を持てない原因の一つは、家庭環境の悪さにあると思います」
それでも日本社会から非行が消えたわけではない。現在、少年院に収容されているのは、ネットやアニメに居場所をつくることさえ許されなかった者たちだ。
冒頭の少年は、中学へも行かせてもらえずに義父の経営する解体業者で働かされていた。後に見るように、劣悪な家庭環境から逃げだした少女が生きていくために売春をするケースや、反社会的勢力につかまって詐欺に加担させられるケースもある。
なぜ彼らは押しなべて言葉で物事を考える力が弱いのか。長年、奈良少年刑務所で教育専門官を務めた乾井智彦は語る。