「社内でまだ少数の女性の管理職は周囲からチヤホヤされていますし、僕なんかが訴えても、取り合ってもらえませんよ」

 そう語ったのは、女性上司への“フキハラ”を繰り返し、職場で厳重注意を受けたという当時27歳の男性だ。事情を聞くと、インターン時代にその女性上司から受けた理不尽な指示が強い影響を与えていた。しかし、原因はそれだけではなく……。

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 職場でのパワハラや家庭内の不和の背景には、他者や自分をケアする力が乏しいことに起因する男性の「生きづらさ」があるのではないか。そんな問題意識のもと、男性たちの葛藤にジャーナリストで近畿大学教授の奥田祥子さんが迫った『抱え込む男たち ケアで読み解く生きづらさの正体』(朝日新書)より一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目/最初から読む

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インターンシップで「理不尽な指導」

 2018年の夏。ある企業が本社で3日間連続で企画したインターンシップで、参加学生一人ひとりがその日一日の体験と感想を発表する報告会。

「もっと大きな声で、はっきりと話してください」

「実践したことをちゃんと説明しないと……うまく伝わっていませんよ」――。

 当時大学3年生の横尾康司さん(仮名)は、人事部の女性担当者の指示に萎縮した。

〈「ちゃんと」「しっかり」と何回も指摘されるけれど、何が「ちゃんと」なのか、わかりやすく説明してくれないと直しようがない〉

〈「はっきりと話せ」と言われても、もともと滑舌が悪いんだから、仕方ないのに……〉

 そう心のなかで嘆きつつ、何とかこらえて全日程を終了。大学4年時にその会社の入社試験を受けて合格し、20年4月に入社した。第一志望の会社だっただけに、意気揚々として社会人のスタートを切った。しかし、インターンシップで女性社員から能力不足の指摘とも取れる発言を繰り返された苦い経験が、もともと女性とのコミュニケーションが苦手だった横尾さんの職場の人間関係に暗い影を落とすことになる。

 このインターンシップでのエピソードを横尾さんが打ち明けたのは、入社5年目の24年の夏。23年4月に総務部から異動してきて、人事部の新任課長になった女性上司と折り合いが悪く、同年秋頃から女性課長に対して無視したり、ふてくされた態度を取ったりすることを3か月続けた。この行為に対し、部長から厳重注意を受けたことをインタビューで話してくれた時のことだった。その女性課長が、大学時代のインターンシップで、横尾さんからすると「理不尽な指導」を行ったという担当者だったのだ。