「昨年の誕生日、LINEを送ったら〈上が最悪だから辞めたい〉と返信が来たんです。それまで仕事の愚痴なんて聞いたことがなかったのに、あの副知事の下で働くようになってから、弱音を吐くようになった。いま振り返ってみると、拓也は話を聞いてほしかったのだと。後悔しか残っていません」  

  後悔を滲ませながら語ったのは、茨城県の飯塚博之副知事(62)の秘書を務め、昨年10月20日に自ら命を絶った桜木拓也さん(仮名、享年41)の遺族、Aさんだ。桜木さんは亡くなる5日前、飯塚氏からのパワハラに悩んでいたことを明かす遺書を残していた。  

茨城県の飯塚博之副知事 ©時事通信社

 桜木さんの自死を巡っては、死因を調査する第三者委員会も設置されたが、遺族のBさんは「第三者委の対応に納得はいっていない」と憤る。自死から10カ月、桜木さんの遺族2人が、「週刊文春」の取材に150分にわたって答えた――。

ADVERTISEMENT

 ◇◇◇◇

 県政担当記者が解説する。

「桜木氏の自殺後、県は遺族の要望を受け、昨年11月に極秘で第三者委員会を設置しました。今年2月、最終的に、飯塚氏と秘書課長を最も軽い処分の厳重注意とし、パワハラはなかったと結論づけました」

「あの副知事の下で仕事するのは限界」とつづられた桜木拓也さん(仮名、享年41)の遺書

知事の「独裁」ともいえる県政の実態

「週刊文春」は県の処分について「遺族は納得していない」と語る県庁関係者の証言などを今年3月13日発売号で掲載した。記事では飯塚氏について、

「打ち合わせでは、部下に対して重箱の隅をつつくような指摘をネチネチと長時間にわたり行う。怒鳴るようなあからさまなパワハラはないものの、かつての部下たちで精神的に疲弊させられた人は多い」

 などの県庁関係者の声を紹介。また、その後、飯塚氏の任命権者の大井川和彦知事(61)についても、職員や県関係者へのパワハラ、公用車の私的利用、県の最高意思決定機関での議事録を残さないなど、「独裁」ともいえる県政の実態を報じてきた。