他方で、松山ケンイチ主演のドラマ『銭ゲバ』(日本テレビ系、2009年)では顔に痣がある心に闇を抱えた令嬢を演じるなど、役の幅も広がっていく。映画『君が踊る、夏』(2010年)では、家族や恋人を気遣う自身初の“正統派ヒロイン”を演じた。「万能型女優」などと呼ばれ出したのもこの頃だ。

「この役を演じたら自分自身がすごく変わるかも」

 舞台にもたびたび出演し、2014年には『奇跡の人』で少女時代のヘレン・ケラーの家庭教師であるアニー・サリバンを演じた。もちろん、子供の頃から舞台に立つことを夢見ていた彼女には強く憧れていた役であり、抜擢されたときは「この役を演じたら自分自身がすごく変わるかも」と思ったという。しかし、デビューしてからというもの、自分は基本的に映像の人間だという意識が強くなり、舞台に出ることに怖い感覚があるのも正直なところであった。

2014年に舞台『奇跡の人』でアニー・サリバン役を演じた。右はヘレン役の高畑充希

 これについてヘレン役の高畑充希に相談すると、「『奇跡の人』をやったら、舞台が絶対大好きになるよ!」と言われた。いかにも子供の頃に『奇跡の人』を観てヘレン役をやりたいから俳優になろうと心に誓ったという高畑らしいが、その言葉に木南は逆にすごく怖くなったとか(『週刊文春』前掲号)。

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 それでも、演出の森新太郎は、サリバンが自身の境遇へのコンプレックスを全然乗り越えられていない欠陥だらけの人間であるところにスポットを当てようとしていたというので(『anan』前掲号)、舞台出演に悩む木南にはむしろハマり役だったのではないか。同作では高畑と本気でぶつかり合う格闘シーンも話題を呼んだ。

木南晴夏のインスタグラムより

 近年もドラマ『おいハンサム!!』(東海テレビ・フジテレビ系、2022年)、『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系、2023年)など話題作にあいついで出演している。一昨年(2023年)放送のドラマ『セクシー田中さん』(日本テレビ系)は原作者側とドラマ制作側との齟齬から不幸な事態にまで発展したが、主演の木南自身は原作マンガのキャラクターに徹底してなりきろうと努力を重ねた。